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ふじもと皮フ科クリニックの医療コラム

IgEが高くないアトピー性皮膚炎にもウパダシチニブは効きますか|内因性と外因性で比べた96週の実臨床データ

2026年10月03日

IgEが高くないアトピー性皮膚炎にもウパダシチニブは効きますか|内因性と外因性で比べた96週の実臨床データ

ふじもと皮フ科クリニック院長藤本です。今回ご紹介するのは、私 藤本栄大 が共著者として参加した研究です。

※本記事は、2026年に Journal of the American Academy of Dermatology に掲載された研究をもとに解説しています。

※アトピー性皮膚炎についてはこちらのアトピー性皮膚炎 診療ページをご覧ください。

この研究は何を調べたのか

アトピー性皮膚炎は、血液検査の IgE の値によって2つのタイプに分けて考えることがあります。IgE はアレルギーにかかわる抗体で、アトピー性皮膚炎の方の多くはこの値が高くなります。こちらを外因性と呼びます。一方で、IgE が高くならず、ぜんそくなどのアレルギーの病気も持っていない方がいます。こちらを内因性と呼びます。

この研究では、IgE が200 IU/mL 未満で、気管支ぜんそく・アレルギー性鼻炎・アレルギー性結膜炎のどれもない方を内因性とし、それ以外の方を外因性としました。

対象は、飲み薬のウパダシチニブを1日15mg使った中等症から重症の患者さん209人です。内因性が34人、外因性が175人で、内因性はおよそ6人に1人でした。全員が、それまで注射薬や飲み薬などの全身治療を受けたことのない方で、ステロイドの塗り薬もあわせて使っています。この2つのタイプについて、96週間、およそ2年の経過を追いました。

見た指標は、皮疹の広さと強さを点数にした EASI、かゆみの強さを患者さんご自身が0から10で答える PP-NRS、アトピー性皮膚炎がどのくらい落ち着いているかを患者さんご自身が答える ADCT、医師による全体の評価、そして血液検査の値です。

なお、ウパダシチニブを96週間使った方を、全身治療を受けたことがあるかどうかで比べた研究は、こちらのコラムで紹介しています。

なぜこの研究が重要なのか

ウパダシチニブは、炎症の信号を細胞の中に伝える JAK1 という通り道を抑える飲み薬です。JAK1 は、アレルギー型の炎症の信号にも、それ以外の種類の炎症の信号にもかかわっています。研究チームは、このしくみから、IgE の高い低いを問わず幅広く効く可能性があると考察しています。

ところが、実際の診療の場で、ウパダシチニブの効き目を内因性と外因性に分けて調べた報告はありませんでした。IgE が高くないタイプでもこの薬が効くのかは、治療を選ぶうえで患者さんにも医師にも知りたい点です。

研究でわかったこと

1. どちらのタイプでも4週で改善し96週まで続いた

EASI、かゆみの PP-NRS、ADCT は、どちらのタイプでも治療開始から4週の時点で大きく下がり、その下がった状態が96週までおおむね続きました。かゆみと ADCT は12週でいったん少し戻り、その後は横ばいでした。

皮疹が75%以上改善した人や90%以上改善した人の割合も、どちらのタイプでも時間とともに増えていきました。

2. 数字の上では内因性のほうが高い指標が多かった

皮疹がほぼ消えた状態や、かゆみがほとんど気にならない状態に届いた人の割合は、いくつもの指標で内因性のほうが数字の上では高めでした。

ただし、治療前の状態がそもそも違っていました。治療前の EASI の平均は、内因性が19.4点、外因性が26.5点です。医師の評価で最も重い段階だった方は、内因性で35.3%、外因性で61.1%でした。外因性のほうが、もともと重い方が多かったことになります。かゆみの強さは、どちらも10点満点で8点前後と同じくらいでした。

研究チームは2つのタイプを統計的に比べることはしておらず、どちらのタイプのほうが効くという結論ではありません。どちらのタイプでも改善がみられた、というのがこの研究の結論です。

3. 頭や首の皮疹も96週まで落ち着いていた

皮疹を頭と首・腕・脚・体幹の4か所に分けて見ても、どちらのタイプでも4週で下がり、96週まで低いまま保たれました。とくに頭と首の皮疹は、96週のあいだにはっきり悪化していく傾向はみられませんでした。頭や首は、治療をしても良くなりにくい方がいる部位で、研究チームはこの点を診療のうえで大切な結果としています。

4. 血液検査の値だけでは効き目を判断できなかった

IgE は、内因性の方では治療中も低いまま安定していました。外因性の方では4週でわずかに下がったあと、84週にかけてむしろ少しずつ上がっていきました。TARC と LDH も、皮膚やかゆみが良くなっているのに下がりませんでした。好酸球数は、どちらのタイプでも4週で大きく下がりました。

研究チームは、IgE・TARC・LDH の値だけでは、ウパダシチニブを始めるかどうかを決めたり、効いているかを判断したりするのには役立たないと考えられる、としています。好酸球数が早く下がったことも、そのあと値が揺れるため、観察された事実として受け止めるべきだとしています。

院長が共著者として参加した別の研究では、トラロキヌマブという注射薬で、治療初期の TARC の下がり方が効き目とよく対応していました。薬によって、血液検査の値の動き方は同じではありません。詳しくはこちらのコラムをご覧ください。

結果を読むときの注意点

内因性の方は34人と少なく、長く経過を追えた人数は時間とともに減っています。96週の時点で評価できたのは、内因性14人、外因性71人でした。

内因性と外因性は、治療前の IgE の値とアレルギーの病気の有無で分けています。特定のアレルゲンに対する検査はしていないため、分類が実際とずれている方がいる可能性があります。

対象は日本人で、ウパダシチニブ1日15mgとステロイドの塗り薬をあわせて使った方です。1日30mgの効き目は調べていません。塗り薬を減らせたかどうかのデータも集めていません。また、この研究は効き目を調べたもので、副作用は今回の解析の対象ではありません。

皮膚科診療にどう活かされるのか

今回の結果は、全身治療をはじめて受ける方であれば、IgE が高くない内因性の方でも、IgE が高い外因性の方でも、ウパダシチニブ1日15mgが治療の選択肢になりうることを示しています。

あわせて、治療中の効き目は IgE などの血液の値だけで判断するものではなく、皮膚の状態、かゆみ、そして患者さんご自身の感じ方をあわせて判断することが大切だということも、あらためて示しています。

ウパダシチニブによる治療をご希望の方は、当院から日本医科大学千葉北総病院へご紹介することが可能です。まずは当院の一般皮膚科外来でご相談ください。

当院からのメッセージ

本研究は、萩野医師をはじめとする日本医科大学千葉北総病院および日本医科大学の研究チームによる成果で、院長は共同研究者として参加しました。

当院では日々の診療を大切にしながら、大学病院との連携を通じて、新しい知見を医学の発展に還元することにも努めています。アトピー性皮膚炎の治療でお困りのことがあれば、どうぞご相談ください。

記事監修者

藤本栄大 院長

ふじもと皮フ科クリニック 院長

藤本 栄大(ふじもと えいた)

医学博士

日本皮膚科学会皮膚科専門医・医学博士

防衛医科大学校卒業後、自衛隊病院・防衛医科大学校附属病院での勤務を経て日本皮膚科学会皮膚科専門医を取得。同大学院在籍中に米国UC Davis(皮膚科学教室)へ留学し医学博士を取得。海上幕僚監部衛生企画室勤務、南極観測船「しらせ」医務長(第54次)、Pacific Partnership参加等を経て、2015年にふじもと皮フ科クリニックを開院。日本医科大学千葉北総病院との共同研究を継続的に実施。

院長プロフィール・研究業績はこちら →

【原著論文】

著者名: Teppei Hagino, Hidehisa Saeki, Eita Fujimoto, Naoko Kanda
論文タイトル: Real-world effectiveness of upadacitinib for intrinsic versus extrinsic atopic dermatitis
掲載誌: Journal of the American Academy of Dermatology 2026
DOI: https://doi.org/10.1016/j.jaad.2026.09.016

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