やけど(熱傷)
やけど(熱傷)
やけどの深さは、触れたものの温度と、触れていた時間の掛け合わせで決まります。一瞬でも高温なら深くなり、44℃ほどの低い温度でも3〜4時間以上触れていれば低温やけどになります。

高温のものや蒸気、火、カイロ、化学薬品に触れて皮膚が傷つくことを、やけどといいます。やけどは俗称で、正式には熱傷といいます。
重さを決めるのは、温度と時間の掛け合わせです。加熱したフライパンに接触した場合のように、接触が一瞬であっても高温であれば症状は強くなります。湯たんぽのような低温のものでも、長時間接触していると重症化します。
一般に湯たんぽのような低温のやけどは接触時間が長くなる場合が多いので、深いやけどになる傾向があります。近年ではヘアアイロンでの頭頸部の受傷例も増えています。
触れた瞬間に痛みが出るやけどと、翌朝になって気づくやけどでは、その後の経過も治療も変わります。このページでは、深さの見分け方・冷やし方・低温やけど・受診の目安・跡の残りにくくし方を順に説明します。
やけどの深さはI度・II度・III度の3段階で、II度はさらに浅いものと深いものに分かれます。治るまでの日数も、跡が残るかどうかも、この深さで決まります。
| 深さ | 見た目 | 痛み | 治るまで | 跡 |
|---|---|---|---|---|
| I度 | 赤くなるだけ | ひりひりする | 数日 | 残らない |
| 浅達性II度 | 水ぶくれ。底が赤い | 強い | 1〜2週間 | 一般に盛り上がる跡は残らない |
| 深達性II度 | 水ぶくれ。底が白い | 鈍いことがある | 3〜4週間 | 肥厚性瘢痕やケロイドを残す可能性が大きい |
| III度 | 白色または褐色で皮革のよう | 感じにくい | 1〜3か月以上 | 手術をしないと引きつれが残る |
この分類は、日本皮膚科学会の熱傷診療ガイドラインによります。分かれ目は、水ぶくれの底が赤いか白いかです。ここがそのまま治療の分かれ目にもなります。
痛みが弱いことは、やけどが軽いことを意味しません。III度では神経まで傷ついているため、かえって痛みを感じにくくなります。感覚がないやけどは、深いやけどを疑います。
やけどは、受傷した当日に深さを見きわめることができません。当院が翌日の再診をおすすめすることがあるのは、このためです。
日本皮膚科学会の熱傷診療ガイドラインは、熱傷創は初期に深度を正確に判定することが困難であり、I度から深達性II度までが混在していることも多い、と述べています。日本熱傷学会も、浅いやけどでも管理の仕方によっては深くなってしまうことがある、としています。
フライパンや鍋のふちに一瞬触れただけでも、その日は赤いだけで、翌日になって水ぶくれが出てくることがあります。受傷した日の見た目だけで決めず、変化を見ることが大切です。
見きわめが難しいのは、1か所のやけどの中に浅いところと深いところが混ざっているためです。ガイドラインも、I度から深達性II度までが混在していることが多いと述べています。全体をひとつの深さで判定できないということです。
受傷した直後にご自宅で写真を撮っておいていただくと、診察のときに変化を追いやすくなります。冷やしたあと、覆う前に1枚撮っておいてください。
もう1つ、深さを左右するのが乾燥です。日本熱傷学会は、創部は乾燥させないこと、乾燥により深度が深くなることがある、としています。やけどの面を乾かさないことが、跡を残さないための最初の一歩になります。
低温やけどは、44℃から50℃ほどの熱源に長い時間触れていることで起こります。熱いと感じない温度で起こるため、気づいたときには深くなっていることが少なくありません。
製品評価技術基盤機構は、低温やけどになるまでの温度と時間の関係を次のように示しています。
| 触れていた温度 | 低温やけどになるまでの時間 |
|---|---|
| 50℃ | 2〜3分 |
| 47℃ | 45分ほど |
| 46℃ | 30分から1時間ほど |
| 45℃ | 1〜3時間 |
| 44℃ | 3〜4時間以上 |
原因になりやすいのは、長い時間からだに触れたままになる製品です。同じ機構が挙げているものを並べます。
低温やけどは、赤みが続いているだけに見えても、その下で深くなっていることがあります。水ぶくれができる、白っぽく硬くなる、押しても痛みが弱い、といった変化があれば、深達性II度からIII度を疑います。
低温やけどは、不注意で起こるものではありません。熱いと感じない温度で進むため、そもそも気づける仕組みがありません。ご自身を責める必要はありません。
受診の目安は、赤みが翌日になっても引かないとき、水ぶくれができたとき、触っても痛みが弱いときです。低温やけどは範囲が狭いことが多く、放っておかれがちですが、深さは範囲と関係ありません。狭くても深いことがあります。
やけどをしたら、まず熱源を断ち、流水で最低5分から30分を目安に冷やしてください。日本熱傷学会が示している目安です。範囲が狭ければ水道水で、広ければ浴室のシャワーで冷やします。
冷やすのが遅れても、意味がなくなるわけではありません。気づいた時点から冷やしてください。そのうえで受診してください。
水ぶくれができる皮膚の病気は、やけどのほかにもあります。熱源に心当たりがないときは、別の病気を考えます。
| 病気 | やけどとの違い | 対応の違い |
|---|---|---|
| とびひ | 水ぶくれが日を追って広がります。熱源の心当たりがありません | 細菌の感染のため抗菌薬を使います |
| 帯状疱疹 | からだの片側に帯状に並ぶ水ぶくれで、先に痛みが出ます | 冷やすと痛みが強くなります。やけどと逆になります |
| 日焼け | 紫外線によるもので、数時間後から赤みとほてりが出ます | 医学的にはやけどと同じ炎症です |
| かぶれ | 触れたものの形に一致して赤みが出ます | 原因を避けたうえで炎症を抑えます |
じくじくして黄色いかさぶたがつき、日を追って広がるときはとびひのことがあります。細菌の感染なので、冷やすことでは治りません。
からだの片側だけに、痛みをともなう水ぶくれが帯状に並ぶときは帯状疱疹を疑います。帯状疱疹の痛みは冷やすと強くなります。やけどと同じつもりで冷やすと、かえってつらくなります。
日焼けで赤くなりひりつく状態は、医学的にはやけどと同じ炎症です。範囲が広く、全身がだるい、吐き気がするといった症状があるときは受診してください。
やけどと診断がついたあとでも、赤みが外側へ広がってくる、痛みが強くなる、黄色い膿が出る、熱が出るといった変化があれば、感染を疑います。いずれも様子を見る場面ではありません。処置の内容が変わりますので、予定より早くご来院ください。
やけどの治療は、水ぶくれの底の色で分かれます。底が赤い浅達性II度までは、当院で塗り薬と被覆材を使って治します。底が白い深達性II度から先は、跡が残ることが見込まれるため、経過を見たうえで連携先の病院へご紹介します。どちらになるかは、診察のうえで事前にお伝えします。
当院が行うのは、塗り薬と被覆材による治療です。外用治療で改善が見込める軽症のやけどを担当します。
日本皮膚科学会の熱傷診療ガイドラインは、やけどの初期治療で塗り薬を選ぶ場合は創面の保護を目的とし、原則として白色ワセリン・酸化亜鉛・ジメチルイソプロピルアズレンなどを用いる、としています。当院が使う塗り薬にも、白色ワセリンとジメチルイソプロピルアズレンが含まれます。
| 塗り薬の一般名 | 何のために使うか |
|---|---|
| 白色ワセリン | 創面を保護し、乾かさないために使います。ガイドラインが原則として挙げている塗り薬です |
| ジメチルイソプロピルアズレン | 炎症を抑えながら創面を保護します。同じくガイドラインが挙げている塗り薬です |
| ゲンタマイシン硫酸塩 | 細菌がついている、またはつきやすいときに使います |
| 混合死菌製剤とヒドロコルチゾンの配合軟膏 | 炎症を抑えながら、じくじくした面を覆います |
| アルプロスタジル アルファデクス | 深くなって治りが遅くなっている面に使います |
| ステロイドの塗り薬 | 赤みとひりつきだけのI度のやけどに使います |
赤くなるだけのI度のやけどには、ステロイドの塗り薬か、混合死菌製剤とヒドロコルチゾンの配合軟膏をお出ししています。水ぶくれができたやけどでは、洗って、保護する塗り薬と被覆材で覆います。
当院で使っている被覆材はプラスモイストです。医療機器製造販売届出番号 27B2X00217PMQA00 の一般医療機器で、患者さんご自身でも購入できます。
やけどの治療は日数がかかります。被覆材を買い足せるものにしておくと、通院の回数も費用の負担も軽くなります。当院がこの被覆材を選んでいるのは、この理由によります。
当院には洗浄のための設備がないため、やけどの面はご自宅で洗っていただきます。ぬるま湯と、よく泡立てた石けんで、そっと洗ってください。こすらないでください。洗ったあとは水気を押さえるようにふき取り、お渡しした塗り薬と被覆材で覆ってください。
生活に支障がある場合と、水ぶくれが大きい場合は、診察のうえで穿刺して中の液を抜きます。大きな水ぶくれは、早かれ遅かれ破れるためです。日本熱傷学会も、水疱が大きい場合は排液することが望ましい、としています。
ご自身でつぶさないでください。清潔でない状態で破ると、そこから感染します。
深達性II度から先、つまり水ぶくれの底が白く、瘢痕が残ることが見込まれるやけどは、連携先の病院へご紹介します。紹介先は、日本医科大学千葉北総病院・船橋市立医療センター・順天堂大学医学部附属浦安病院です。
日本熱傷学会が入院しての治療にあたるとしている範囲は、II度が体表の15%以上、またはIII度が2%以上です。顔・手・陰部のやけどは、面積が狭くても重いやけどとして扱います。気道のやけど、化学薬品によるやけど、電気によるやけども同じです。
やけどは皮膚科で診ます。当院は日本皮膚科学会皮膚科専門医が診療しています。ただし、範囲が広いやけどと気道のやけどは、皮膚科ではなく救急の対象です。
その方の手のひら1枚が、体表のおよそ1%にあたります。日本熱傷学会が示している目安で、手掌法といいます。手のひら何枚分かを数えると、おおよその面積が分かります。
| 状態 | どこへ | 理由 |
|---|---|---|
| 赤くなっただけで範囲が狭い | 皮膚科 | 塗り薬で治せます。翌日に水ぶくれが出ることがあるため、受診をおすすめします |
| 水ぶくれができた | 皮膚科 | 深さの見きわめと、水ぶくれの処置が必要です |
| 顔・手・陰部のやけど | 皮膚科へすぐに | 面積が狭くても重いやけどとして扱います |
| 痛みを感じない。白く硬い | 皮膚科へすぐに | III度のやけどが疑われます |
| 手のひら15枚分以上の範囲 | 救急 | II度で体表の15%以上にあたり、入院しての治療の対象です |
| 煙を吸った。声がかすれる | 救急 | 気道のやけどが疑われます |
| 化学薬品や電気によるやけど | 救急 | 見た目より深いことがあります |
当院では、範囲が広くご自身での処置に手間がかかるもの、痛みが強いもの、日常生活に支障があるものは、早めに受診していただくようご案内しています。
やけどは急に起こります。ご予約がない方も直接ご来院いただけます。ただし、ご予約の方を優先してご案内するため、お待ちいただくことがあります。
受付から診察までの流れは初めての方へをご覧ください。
やけどの跡が残るかどうかは、治るまでにかかった日数でほぼ決まります。1〜2週間で治ったやけどは、一般に盛り上がる跡を残しません。3〜4週間かかったやけどは、肥厚性瘢痕やケロイドを残す可能性が大きくなります。
できることは2つです。深くしないことと、治るまでの日数を延ばさないこと。乾かさない、自分でつぶさない、途中でやめない。この3つが、そのまま跡の残り方に効きます。
やけどが治ったあと、その部分が茶色く残ることがあります。炎症後色素沈着といいます。多くは時間とともに薄くなりますが、紫外線を浴びると濃くなります。
色素沈着が長く続く場合は、自費でのご相談になります。炎症後色素沈着の考え方はシミ取り治療のページで説明しています。
関節をまたぐ場所のやけどは、引きつれが問題になりやすい場所です。ひじ・ひざ・手指・首は、皮膚が縮むと動きそのものが制限されます。この部位のやけどは、跡の見た目よりも動きを優先して考えます。
盛り上がった跡とケロイドは、保険診療で治療します。当院で使うのは、ステロイドの塗り薬と、肥厚性瘢痕とケロイドに用いるステロイドの貼り薬です。貼り薬の一般名はデプロドンプロピオン酸エステルで、貼っているあいだ薬が働き続けます。
引きつれが強く、関節の動きに支障が出ている場合は、高度医療機関へご紹介します。
跡のご相談は、やけどが治ってからでも承ります。時間が経ってからでも、できることはあります。盛り上がりや引きつれは、治ってから数か月かけて変化しますので、いま気になっている状態がそのまま残るとはかぎりません。
A. まず流水で冷やしてください。目安は最低5分から30分です。一瞬の接触でも、フライパンのように高温のものであれば深いやけどになります。その日は赤いだけでも、翌日に水ぶくれが出てくることがありますので、冷やしたあとに受診してください。
A. 日本熱傷学会は、最低5分から30分くらいを目安に、できれば流水で冷やすとしています。狭い範囲は水道水で、広い範囲は浴室のシャワーで冷やします。痛みがやわらいだ時点でやめてください。
A. 気づいた時点から冷やしてください。遅れたからといって意味がなくなるわけではありません。ただし深さは受傷した日には分かりませんので、冷やしたあとに受診していただくことをおすすめします。
A. ご自身ではつぶさないでください。清潔でない状態で破ると、そこから感染します。当院では、生活に支障がある場合と、水ぶくれが大きい場合に、診察のうえで穿刺して中の液を抜いています。日本熱傷学会も、水疱が大きい場合は排液することが望ましいとしています。
A. 深さによります。表皮だけが赤くなるI度は数日、水ぶくれの底が赤い浅達性II度は1〜2週間、底が白い深達性II度は3〜4週間、皮膚の全層に達するIII度は1〜3か月以上かかります。日本皮膚科学会の熱傷診療ガイドラインによる目安です。
A. 自己判断で抗菌薬やステロイドを塗ることは避けてください。深さによって選ぶ薬が変わります。当院では、白色ワセリンやジメチルイソプロピルアズレンのように創面を保護する塗り薬を基本に、状態に応じて使い分けています。
A. 熱いと感じない温度で起こるためです。製品評価技術基盤機構は、50℃で2〜3分、47℃で45分ほど、46℃で30分から1時間ほど、45℃で1〜3時間、44℃で3〜4時間以上としています。電気あんかやゆたんぽ、使い捨てカイロ、携帯電話などで起こり、見た目が小さくても深いことがあります。
A. 治るまでにかかった日数でほぼ決まります。1〜2週間で治ったやけどは、一般に盛り上がる跡を残しません。3〜4週間かかったやけどでは、肥厚性瘢痕やケロイドを残す可能性が大きくなります。治ったあとの色素沈着は、日焼け止めをSPF30・PA+++以上で毎日塗り、2〜3時間おきに塗り直すことで濃くなりにくくなります。
A. いいえ、逆のことがあります。III度のやけどでは神経まで傷ついているため、かえって痛みを感じにくくなります。白く硬い、褐色で皮革のようだ、押しても痛みが弱い、といった状態はすぐに受診してください。
A. 冷やしすぎに注意してください。日本熱傷学会は、小児の場合は長く広範囲を冷却すると低体温をきたし、意識障害や不整脈を起こすことがあると注意を促しています。痛みがやわらいだ時点でやめ、乾かさずに覆って受診してください。お子さんの皮膚のご相談は小児皮膚科のページもご覧ください。
やけどで覚えておいていただきたいことは3つです。
当院は、塗り薬と被覆材で改善が見込めるやけどを担当し、跡が残ると見込まれる深さのやけどは連携先の病院へご紹介します。ご予約と受付については初めての方へをご覧ください。お子さんの皮膚のご相談は小児皮膚科のページにまとめています。
このページの内容は、ふじもと皮フ科クリニック院長で日本皮膚科学会皮膚科専門医・医学博士の藤本栄大が監修しています。院長プロフィール・研究業績はこちら
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