WEB予約 TEL.050-1807-7892
ロゴイメージ

ふじもと皮フ科クリニックの医療コラム

アトピー性皮膚炎の治療効果は血液検査でわかりますか|トラロキヌマブ48週の実臨床データ

2026年9月13日

アトピー性皮膚炎の治療効果は血液検査でわかりますか|トラロキヌマブ48週の実臨床データ

ふじもと皮フ科クリニック院長藤本です。今回ご紹介するのは、私 藤本栄大 が共著者として参加した研究です。

※本記事は、2026年に European Journal of Dermatology に掲載された研究をもとに解説しています。

※アトピー性皮膚炎についてはこちらのアトピー性皮膚炎 診療ページをご覧ください。

この研究は何を調べたのか

アトピー性皮膚炎の治療で使われるトラロキヌマブという注射薬について、治療中の血液検査の値が、実際の皮膚の状態やかゆみの改善とどう対応しているかを調べた研究です。

対象は中等症から重症のアトピー性皮膚炎の患者さん203名。平均年齢は44.9歳で、群馬大学と日本医科大学千葉北総病院の2施設において、48週間にわたって前向きに追跡しました。

見た指標は4つです。IgE と TARC は、体の中のアレルギーの反応の強さを映すとされる血液の値。LDH は炎症や組織の傷みの目安。そして好酸球数です。これらの変化を、皮疹の広さと強さを点数にした EASI、かゆみの強さを患者さんご自身が0から10で答える PP-NRS と突き合わせました。

なぜこの研究が重要なのか

診察室で医師が見て判断する皮膚の状態と、患者さんご自身が感じるつらさは、いつも一致するとは限りません。だからこそ、客観的な物差しがもう一つあると、治療がうまくいっているかを確かめやすくなります。

トラロキヌマブの治療中に血液の値が下がることは、これまでも報告されていました。ただし、その下がり方が皮膚やかゆみの改善の程度とどこまで対応しているのか、そして治療のどの時期なら対応するのかは、はっきりしていませんでした。

研究でわかったこと

1. 皮疹もかゆみも48週まで改善が続いた

EASI は治療開始から4週の時点で中央値49.7%下がり、16週で74.9%、48週では93.3%まで下がりました。かゆみの PP-NRS も4週で50.0%、16週で60.0%、48週で71.4%下がりました。早い時期に大きく改善し、その後もゆるやかに改善が続いた形です。

2. 血液の指標は治療の初期に改善とよく対応した

TARC の下がり方は、4週と12週の時点で、皮疹の改善ともかゆみの改善とも対応していました。IgE は4週と12週の皮疹、そして4週のかゆみと対応しました。LDH は4週・12週・24週の皮疹と対応しました。

一方で、24週より後になると、血液の値の動きと改善の程度との対応は弱くなりました。研究チームはその理由として、皮疹もかゆみも24週までにすでに大きく良くなっていて、点数の幅が狭くなったことを挙げています。

3. 好酸球はむしろ増えた

好酸球数は治療開始後に増え、36週で最も高くなり、48週の時点でも治療前より高いままでした。この薬の作用のしかたから知られている変化です。

皮膚科診療にどう活かされるのか

この研究が示しているのは、TARC が治療初期の効き目を映す物差しになりうるということ、IgE も早い時期の皮疹の改善を映しうるということ、そして LDH は初期から中期にかけての皮疹の改善を映しうるということです。

言いかえると、血液検査が役に立つ時期は治療の初期に集中しているということでもあります。治療が落ち着いたあとの血液の値だけを見て効いていないと考えるのは、この研究からは適切ではありません。診察で皮膚を見ること、そして患者さんご自身の感じ方を伺うことが、やはり治療の判断の中心にあります。

トラロキヌマブによる治療をご希望の方は、当院から日本医科大学千葉北総病院へご紹介することが可能です。まずは当院の一般皮膚科外来でご相談ください。

当院からのメッセージ

本研究は、萩野医師をはじめとする日本医科大学千葉北総病院および群馬大学の共同研究者による成果で、当院院長は共著者として参加しました。

当院では日々の診療を大切にしながら、大学病院との連携を通じて、新しい知見を医学の発展に還元することにも努めています。アトピー性皮膚炎の治療でお困りのことがあれば、どうぞご相談ください。

記事監修者

藤本栄大 院長

ふじもと皮フ科クリニック 院長

藤本 栄大(ふじもと えいた)

医学博士

日本皮膚科学会皮膚科専門医・医学博士

防衛医科大学校卒業後、自衛隊病院・防衛医科大学校附属病院での勤務を経て日本皮膚科学会皮膚科専門医を取得。同大学院在籍中に米国UC Davis(皮膚科学教室)へ留学し医学博士を取得。海上幕僚監部衛生企画室勤務、南極観測船「しらせ」医務長(第54次)、Pacific Partnership参加等を経て、2015年にふじもと皮フ科クリニックを開院。日本医科大学千葉北総病院との共同研究を継続的に実施。

院長プロフィール・研究業績はこちら →

【原著論文】

著者名: Mizuki Shiba, Teppei Hagino, Akihiko Uchiyama, Hidehisa Saeki, Eita Fujimoto, Sei-ichiro Motegi, Naoko Kanda
論文タイトル: Routine blood biomarkers associated with clinical response to tralokinumab in patients with atopic dermatitis: a 48-week real-world study in Japan
掲載誌: European Journal of Dermatology 2026;36(5)
DOI: https://doi.org/10.1684/ejd.2026.5144

TOP

AIに質問 登録不要 ご相談はこちらから