ニキビ
ニキビ
ニキビは尋常性痤瘡という慢性の皮膚疾患です。毛穴の詰まりから始まり、炎症を経て、放っておくと跡を残します。
ニキビは、医学的には尋常性痤瘡と呼びます。思春期の一時的な肌荒れではなく、数か月から数年にわたって新しい皮疹ができ続ける、慢性の疾患です。
治療の目的は2つあります。いま出ている炎症を鎮めることと、新しいニキビができない状態を保つことです。前者だけで治療を終えると、薬をやめた時点で元に戻ります。ニキビの治療が長くかかると言われるのは、この2つ目があるためです。
そしてニキビの治療には、時間の制約があります。炎症の強い状態が長く続くほど、赤みや色素沈着、凹みといった跡が残りやすくなります。いったん跡になると保険診療での改善は難しく、自費の治療が必要になります。跡になる前に炎症を抑えることが、いちばん確実で、いちばん費用のかからない方法です。
どの皮疹が跡を残すかを、あらかじめ見分ける方法はありません。だからこそ、赤く腫れているうちにご相談いただきたいと考えています。
当院では、日本皮膚科学会の尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023を踏まえて、保険診療の塗り薬と飲み薬を中心に治療を組み立てています。
ニキビは面皰、炎症性皮疹、囊腫・硬結の3段階に分かれます。どの段階が中心かで、選ぶ薬が変わります。
白ニキビから出てくる白い塊が何なのか、自分でつぶしてよいのかについては、ニキビの白い塊の正体と正しい対処法で詳しく説明しています。
ご自身で重症度を判定していただく必要はありません。ただ、同じニキビでも人によって処方が違う理由を知っていただくために、医師がどこを見ているかを書いておきます。
日本で使われている判定基準は、皮膚科専門医で構成されたアクネ研究会が作成したものです。赤く腫れた皮疹と膿を持った皮疹を、顔の片側で数えます。
| 重症度 | 片顔の炎症性皮疹の数 | 治療の組み立て |
|---|---|---|
| 軽症 | 5個以下 | 塗り薬 |
| 中等症 | 6個以上20個以下 | 塗り薬。配合剤を選ぶことが多い |
| 重症 | 21個以上50個以下 | 塗り薬と飲み薬の併用 |
| 最重症 | 51個以上 | 塗り薬と飲み薬の併用。改善しない場合は自費の内服も検討 |
数えるのは炎症性皮疹だけで、白ニキビと黒ニキビは含めません。実際には、この数だけで決めるわけではありません。跡の残りやすさ、これまでの経過、生活の状況を合わせて、お一人ずつご提案します。
胸や背中、額に、大きさのそろった小さなぶつぶつがまとまって出ている場合は、マラセチア毛包炎のことがあります。皮膚の常在菌であるマラセチアが毛穴の中で増えて起こるもので、面皰ができないのが特徴です。ニキビの薬では良くならず、抗真菌薬で治療します。顔や頭皮に脂っぽいフケや赤みを伴う場合は、脂漏性皮膚炎が重なっていることもあります。
ニキビは、皮脂の増加、毛穴の詰まり、アクネ菌の増殖という3つが重なって起こります。
この3つは順番に起こるのではなく、同時に進みます。だから治療も、炎症を抑える薬だけでは足りません。毛穴の詰まりに働く薬を続けることが必要になります。
ニキビができると、洗顔が足りない、不潔だからと感じる方が少なくありません。ニキビの始まりは毛穴の出口の角質が厚くなることで、洗顔で落とせるものではありません。洗いすぎるとかえって刺激になり、悪化させることもあります。
短期間に急に増えた場合は、原因が別にあることもあります。突然ニキビが大量発生したときの原因と対処法もあわせてご覧ください。
ニキビの抗菌薬は、漫然と続ける薬ではありません。ガイドラインは、内服抗菌薬の投与を3か月までとし、6週目から8週目に再評価することを推奨しています。
赤く腫れたニキビに抗菌薬がよく効くことは、ガイドラインでも最も高い推奨度が付いています。問題は、効くからといって長く続けたときに起こることです。抗菌薬を漫然と使うと、その薬が効かない菌が皮膚に増えます。次に本当に必要になったときに、選べる薬が減ります。
尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023は、内服抗菌薬について、耐性菌の出現を防ぐため長期間の使用は控えたほうがよいとしています。あわせて、内服抗菌薬の単独使用と、内服抗菌薬と外用抗菌薬の併用を避けることも明記されています。
抗菌薬をお出しするときは、過酸化ベンゾイルかアダパレンをあわせて処方するようにしています。この2つは、菌を殺すのではなく毛穴の詰まりに働く薬です。過酸化ベンゾイルについては、これまで耐性菌が見つかっていません。抗菌薬で炎症を抑えているあいだに、詰まりの側を治しておく。そうすることで、抗菌薬をやめても戻りにくい状態がつくれます。
ガイドラインは、面皰に対する外用抗菌薬を推奨していません。炎症が起きていない毛穴の詰まりに、菌を抑える薬は効かないためです。白ニキビと黒ニキビが中心の方には、アダパレンや過酸化ベンゾイルの塗り薬を選びます。
薬が増えることをご心配される方もいますが、抗菌薬を短く終わらせるために、はじめから2剤にしています。結果として、治療全体は短くなります。
ニキビの塗り薬は5種類あり、面皰が多いか炎症が強いかで選び分けます。すべて保険適用です。
| 薬 | 成分 | 主な対象 | 添付文書の記載 | 妊娠中 |
|---|---|---|---|---|
| ベピオゲル®・ベピオローション®・ベピオウォッシュゲル® | 過酸化ベンゾイル | 面皰と炎症の両方 | 部位の限定なし | 有益性が上回る場合のみ |
| ディフェリンゲル® | アダパレン | 面皰が中心 | 顔面の尋常性ざ瘡 | 使用できません |
| エピデュオゲル® | アダパレンと過酸化ベンゾイルの配合 | 面皰と炎症が混在 | 顔面の尋常性ざ瘡 | 使用できません |
| デュアック配合ゲル® | クリンダマイシンと過酸化ベンゾイルの配合 | 炎症が中心 | 部位の限定なし | 有益性が上回る場合のみ |
| ダラシンTゲル®・アクアチム®・ゼビアックス® | 外用抗菌薬 | 炎症が中心 | 部位の限定なし | 有益性が上回る場合のみ |
毛穴の詰まりをゆるめ、同時にアクネ菌を減らす薬です。抗菌薬ではないため、耐性菌の心配がありません。日本で行われた3か月間の比較試験では、顔面に炎症性皮疹を11個から40個持つ患者さんで、炎症性皮疹の減少率が72.7%でした。何も入っていない基剤では41.7%です。
添付文書に、使う部位の限定がありません。臨床試験は顔面で行われていますが、背中や胸のニキビにも医師の判断で用います。ゲル、ローション、洗い流すタイプのウォッシュゲルがあり、範囲の広さや肌質で選びます。
臨床試験で副作用が現れた方の割合は、ゲル製剤で37.3%から49.4%、ローション製剤で11.9%でした。多いものは皮膚剝脱、塗った場所の刺激感、紅斑、乾燥です。漂白作用があるため、髪や衣類、枕カバーに付かないようご注意ください。
毛穴の出口の角質が厚くなるのを抑え、目に見えない微小面皰の段階で新しいニキビを止める薬です。すでにできたニキビを治すというより、次を作らせない薬だとお考えください。
添付文書では、顔面の尋常性ざ瘡に使用することとされています。顔面以外の部位における有効性・安全性は確立していません。1日1回、洗顔後、就寝前に塗ります。3か月使って改善がない場合は中止します。
副作用は皮膚乾燥56.1%、皮膚不快感47.6%、皮膚剝脱33.5%、紅斑21.9%、そう痒症13.2%と高い頻度で出ますが、多くは開始2週間以内に現れ、通常は軽度です。ここでやめてしまう方が多いので、保湿を併用しながら乗り切ってください。妊娠中と妊娠の可能性のある方は使用できません。
上の2剤を1本にまとめた薬です。詰まりと炎症の両方に同時に働くため、面皰と赤ニキビが混ざっている方に向いています。1日1回で済み、2本を塗り分ける手間もありません。
この薬も、添付文書では顔面の尋常性ざ瘡に使用することとされています。胸部や背部など顔面以外の部位における有効性・安全性は確立していません。副作用は皮膚刺激が5%以上で、単剤より刺激は強めです。妊娠中と妊娠の可能性のある方は使用できません。
抗菌薬と過酸化ベンゾイルの配合剤で、赤く腫れたニキビに最も早く効きます。1日1回、洗顔後に塗ります。12週間で効果がない場合は中止します。
この薬は2℃から8℃で保存します。冷蔵庫に入れてください。常温に置き続けると成分が変化します。受け取ったあと、そのまま洗面所に置いてしまう方が少なくありません。
抗菌薬を含むため、炎症が落ち着いたあとの維持には使いません。ガイドラインも、この薬を炎症性皮疹軽快後の維持療法として推奨していません。落ち着いた時点で、ベピオゲル®やディフェリンゲル®に切り替えます。
クリンダマイシン、ナジフロキサシン、オゼノキサシンの3成分があり、炎症性皮疹に対してはガイドラインで最も高い推奨度が付いています。ただし単独で長く使う薬ではありません。過酸化ベンゾイルかアダパレンと併用し、炎症が落ち着いたら終了します。面皰だけの方には使いません。
角質をやわらかくする作用があり、ガイドラインでも選択肢の一つとして挙げられています。刺激の強い薬を使えない方や、部分的に使いたい場合に選びます。
アダパレンと過酸化ベンゾイルは、日本ではいまのところ市販されていません。ドラッグストアで買えるニキビ用の外用剤は、殺菌成分や抗炎症成分が中心で、毛穴の詰まりそのものに働く成分は含まれていません。市販薬を2週間使って変わらない場合は、成分の違いによるものと考えてください。
赤く腫れたニキビには、抗菌薬の内服を塗り薬と併用します。保険適用です。
塗り薬だけでは追いつかない炎症に対して、飲み薬を併用します。ガイドラインの推奨度は次のとおりです。
| 成分 | ガイドラインの推奨度 |
|---|---|
| ドキシサイクリン | A 強く推奨 |
| ミノサイクリン | A 推奨 |
| ロキシスロマイシン | B 推奨 |
| ファロペネム | B 推奨 |
ガイドラインは、内服抗菌薬の投与を3か月までとし、6週目から8週目に再評価することを推奨しています。理由は【医師の視点】抗菌薬は、ゴールを決めて使いますに書いたとおりです。実際の期間は、効き方と経過を見ながら診察のたびにご相談します。
他の治療で十分な改善が得られない場合や、他の治療が使いにくい場合に、荊芥連翹湯、清上防風湯、十味敗毒湯を用いることがあります。ガイドラインでも、こうした状況での選択肢の一つとして挙げられています。漢方薬も保険診療で処方できます。
補助的にお出しすることがありますが、ビタミン薬の内服そのものに強い根拠はありません。主役は塗り薬と抗菌薬です。
ガイドラインは、炎症を抑える治療の期間を最大3か月間を目安とし、そのあとは再発を防ぐ維持の治療に移ることを想定しています。
維持期に使う薬は、アダパレン、過酸化ベンゾイル、アダパレンと過酸化ベンゾイルの配合剤の3つで、いずれもガイドラインで最も高い推奨度が付いています。いずれも耐性菌をつくらない薬です。デュアック配合ゲル®のような抗菌薬入りの配合剤は、この時期には使いません。
薬の効果が目に見えて出るまでには、通常6週間から8週間かかります。1回や2回の受診で判断しないでください。逆に、3か月続けても変わらない場合は治療の組み立てを変えます。
維持期をどのくらい続けるかは、これまでの経過によって変わります。何年も繰り返している方ほど、長めに続けたほうが安定します。やめる時期は、診察のたびにご相談しながら決めていきます。
塗り薬と飲み薬は保険で受けられます。レーザー、光治療、イソトレチノインの内服は保険が使えません。
| 治療 | 保険 | 当院での扱い |
|---|---|---|
| 塗り薬 アダパレン・過酸化ベンゾイル・配合剤・外用抗菌薬 | 適用 | 保険診療で処方します |
| 飲み薬 抗菌薬 | 適用 | 保険診療で処方します |
| 漢方薬 | 適用 | 保険診療で処方します |
| 光治療 | 適用外 | 自費診療。当院ではBBLで対応しています |
| レーザー治療 | 適用外 | 自費診療。当院ではVビームプリマ、ピコフラクショナルレーザー、CO2フラクショナルレーザーで対応しています |
| イソトレチノインの内服 | 適用外 | 自費診療です。国内未承認の医薬品です |
ニキビやニキビ跡にレーザーや光治療を使う場合、保険は使えません。ただし、受けられないという意味ではありません。尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023も、治療効果が期待できる場合には行ってもよいとしています。国内での報告がまだ少ない段階のため、どなたにも一律にお勧めするものではありませんが、跡のタイプによっては有力な選択肢です。
順序としては、まず保険の塗り薬と飲み薬で炎症を抑えることをおすすめします。費用の面でも、そのほうが結果的に負担が軽くなります。そのうえで、残った赤みや凹凸には保険の外用薬では届きません。当院ではVビームプリマ、BBL、ピコフラクショナルレーザー、CO2フラクショナルレーザーをご用意しています。どれが合うかは跡のタイプで変わりますので、ニキビ跡・ニキビの美容皮膚科治療のページをご覧ください。
保険の外用薬と内服薬を3か月続けても十分に改善しない場合に、イソトレチノインの内服を検討します。
イソトレチノインは皮脂腺を縮小させて皮脂の分泌を減らす内服薬で、重症または難治性のニキビに用います。ただし日本では承認されていない未承認医薬品で、自費診療となり、妊娠に関する厳格な注意が必要です。用量、費用、副作用、未承認医薬品としての注意事項はニキビ跡・ニキビの美容皮膚科治療のページにまとめています。
ご検討の方も、まずは保険診療での受診をご予約ください。初診で状態と治療歴を確認したうえでご案内します。
ニキビ跡は、赤み、色素沈着、凹み、盛り上がりの4つのタイプに分かれ、有効な治療が異なります。いずれも保険では治療できません。タイプごとの見分け方と当院の自費治療は、ニキビ跡・ニキビの美容皮膚科治療のページで表にまとめています。
洗顔は1日2回、湯温は32℃から34℃。ガイドラインが推奨しているセルフケアは、実はごくわずかです。
ガイドラインは、1日2回の洗顔を推奨しています。それ以上増やしても効果はなく、皮脂を落としすぎると刺激になります。湯温は32℃から34℃を目安にしてください。熱いお湯は必要な皮脂まで奪います。ごしごしこすらず、泡でなでるように洗います。
毛穴を詰まらせにくいことを確かめた製品に、ノンコメドジェニックテスト済みと表示されています。治療中でもメイクはできます。低刺激性でノンコメドジェニックな製品を選び、帰宅後はクレンジングと洗顔を丁寧に行ってください。
どれを選べばよいか迷う場合は、当院で取り扱っているものをホームケア製品のご案内にまとめています。このなかには当院院長が監修した製品が含まれます。スキンケアは塗り薬の代わりにはなりません。治療を続けやすくするための補助としてお考えください。
いま出ているニキビにだけ点で塗る方が多いのですが、薬が働くのは目に見えない微小面皰の段階です。ニキビができやすい範囲全体に、薄く伸ばしてください。塗りムラがあると効果が出にくくなります。
アダパレンや過酸化ベンゾイルは、塗り始めに乾燥やヒリつきが出ます。多くは開始2週間以内に現れ、通常は軽度です。保湿剤を併用すると軽くなります。強い赤みやかゆみが続く場合は、自己判断で中止せずご相談ください。塗る回数を減らす、隔日にするなど、こちらで調整します。
ベピオゲル®、エピデュオゲル®、デュアック配合ゲル®には漂白作用があります。枕カバーやタオルの色が抜けます。塗ったあとは手をよく洗い、乾いてから寝具に触れてください。
ガイドラインは、痤瘡患者に特定の食べ物を一律に制限することを推奨していません。チョコレートや揚げ物をやめれば治る、という単純な関係は確かめられていないためです。ただし、ご自身で食べると悪化すると感じている食品があれば、それは個別に見ていく価値があります。診察のときに教えてください。
指や器具で無理に押し出すと、炎症が深くなり、凹んだ跡が残ります。詰まりが強くて気になる場合は、自分で処理せず、診察のときにご相談ください。
市販薬を2週間使っても改善しない場合と、赤く腫れたニキビがある場合は受診してください。
何歳から受診できますか、という質問をよくいただきます。年齢の制限はありません。ただし12歳未満のお子さんについては臨床試験が行われていない薬があるため、お使いいただける薬が限られます。診察のうえでご説明します。
ニキビの治療は保険診療です。健康保険証をお持ちください。これまでに使った市販薬や、他院で処方された薬があれば、現物か写真をお持ちいただけると治療の組み立てが早くなります。
高校生までのお子さんは、お住まいの自治体の子ども医療費助成の対象になります。受給券もあわせてお持ちください。ニキビの治療は数か月続きますので、助成が使えるあいだに始めておくことをおすすめします。
このページの内容は、ふじもと皮フ科クリニック院長で日本皮膚科学会認定専門医・医学博士の藤本栄大が監修しています。院長プロフィール・研究業績はこちら
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