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ふじもと皮フ科クリニックの医療コラム

肌の糖化とは?黄ぐすみの原因とAGEsを増やさない生活習慣|皮膚科専門医が解説

2026年10月07日

肌の糖化とは?黄ぐすみの原因とAGEsを増やさない生活習慣|皮膚科専門医が解説

鏡を見て、肌が黄色くくすんで見える。ハリが落ちた気がする。その背景にあるものとして、近年よく取り上げられるようになったのが糖化です。

糖化とは、体のなかで余った糖がたんぱく質と結びついてしまう反応のことをいいます。このときつくられる物質を、AGEs(終末糖化産物)と呼びます。

私はこの糖化を研究し、医学博士の学位を取得しました。当時はまだ、糖化を測る機器も、それをうたう商品も、ほとんど世に出ていませんでした。

そのうえで申し上げると、糖化については、科学的に確からしいことと、まだ言えないことがはっきり分かれています。この記事では、その線引きを含めてお伝えします。

なぜ皮膚科医が糖化を研究していたのか

私は皮膚における糖化を研究し、医学博士の学位を取得しました。

取り組んだのは、後天性穿孔性皮膚症という病気です。糖尿病や透析を受けている方に生じることのある皮膚の病気で、かゆみを伴う硬い皮疹ができるのですが、なぜそうなるのかが分かっていませんでした。

研究で示したのは、糖化を受けたコラーゲンが、CD36という受け皿を介して、表皮の細胞のふるまいそのものを変えるということでした。この成果は Journal of Investigative Dermatology 誌に掲載されています(2010年・130巻2号405-414頁)。

ここから得られた見方は、いまも診察の土台になっています。真皮という土台で起きた変化が、その上にある表皮に伝わっていた。つまり肌は、層ごとに切り分けて考えるものではないということです。表面に現れている変化の原因は、たいてい一段深いところにあります。

そして、この領域を長く見てきたからこそ、順番として申し上げたいことがあります。糖化について私がまずお伝えしているのは、血糖の管理、禁煙、紫外線を防ぐことという、地味な生活習慣の話です。何かを足すよりも先に、土台にあたるここを整えるほうが確かだからです。理由は、この記事の後半でご説明します。

→ 院長の経歴・研究業績

肌の糖化とは

糖化とは、余った糖がたんぱく質と結びつき、AGEs(終末糖化産物)をつくる反応です。

この反応の特徴は、酵素が関わらないことにあります。体のなかで起きる反応の多くは酵素が速度を調節していますが、糖化にはその調節役がいません。糖とたんぱく質があり、時間が経てば、それだけで進んでいきます。

糖は、食事から入るだけでなく、体のなかの通常の代謝でもつくられます。つまり糖化は、誰の体でも起きている反応です。

問題になるのは、蓄積するたんぱく質があることです。真皮の主成分であるコラーゲンは、一度つくられると長くとどまるたんぱく質です。入れ替わりの速い組織であれば、糖化を受けたものも順に置き換わっていきますが、長くとどまるたんぱく質では、受けた変化がそのまま残りやすくなります。

また、つくられたAGEsは、RAGEと呼ばれる受容体に結合し、酸化ストレスや炎症の反応を引き起こすことが報告されています。

糖化が肌に起こすこと

糖化は、肌の黄色いくすみと、弾力の低下に関わると考えられています。

  • 黄ぐすみ — 2024年、ヒトの皮膚(表皮の外植片)から、強い黄色を持つ糖化産物AGEYが同定されました。その存在量は、皮膚の黄色度と強く相関しています。ただしこれは外植片と三次元の再構築表皮モデルでの結果であり、人の顔の黄ぐすみの原因が確定したという段階ではありません。
  • 弾力の低下 — AGEsがコラーゲンやエラスチンの線維どうしを架橋、つまり橋を架けるようにつなぐことで、線維が硬くなり、分解と再構築がされにくくなると考えられています。
  • 色素沈着 — 培養した皮膚細胞と三次元の皮膚モデルを使った研究で、AGEsがメラノサイトのチロシナーゼ活性とメラニン産生を高め、線維芽細胞ではNLRP1とCaspase-1を介してIL-33を増やすことが報告されました。こちらも細胞とモデルでの結果です。
  • 炎症 — RAGEを介した酸化ストレスと炎症の経路が関わるとされています。ただしRAGEは糖化産物以外にも多様なリガンドを認識する受容体です。RAGEが関わっているからといって、その原因が糖化であるとは限りません。

ここで区別しておきたいことがあります。黄ぐすみとシミは、成り立ちが異なります。

シミは、メラニンという色素が部分的に増えて濃くなったものです。境界がはっきりしていて、輪郭を指でなぞれることが多くあります。一方で糖化による黄色い変化は、特定の場所に濃く出るというより、顔全体の色調がくすんで見える形をとります。ご自身では、肌そのものの変化というより、照明や体調のせいだと感じておられることもあります。

この2つは同時に進みますし、糖化がメラニンの産生にも関わる可能性が細胞レベルで示されています。つまり、どちらか一方だけの話として切り分けられるものではありません。

肌の色調やハリの変化には、糖化以外の要因も重なります。それぞれの治療については、こちらをご覧ください。

→ シミ取り治療

→ しわ・たるみ治療

糖化が進む原因

糖化は加齢とともに誰にでも進みますが、高血糖・喫煙・紫外線があると進みやすくなります。

  • 加齢 — 長くとどまるたんぱく質に、時間をかけて蓄積していきます。誰にでも起こる変化です。同じ年齢でも進み方に差が出るのは、以下の要因の重なり方が人によって違うためと考えられています。
  • 高血糖 — 糖の濃度が高いほど反応は進みます。糖尿病では糖化産物の蓄積が高まることが知られています。ここで大切なのは、糖尿病と診断されていない方でも、食後に血糖が大きく上がる状態が続けば、その分だけ反応の材料が増えるということです。
  • 喫煙 — 酸化ストレスを通じて、糖化産物の生成と蓄積に関わるとされています。
  • 紫外線 — こちらも酸化ストレスを介して関わり、光老化による変化と重なります。
  • 食習慣 — 食品にもAGEsは含まれます。ただし食事から摂るAGEsが皮膚の蓄積にどれだけ影響するかについては、後述するとおり、はっきりした結論が出ていません。

この4つのうち、加齢は変えられません。変えられるのは、高血糖・喫煙・紫外線の3つです。次の項目は、この3つにそのまま対応しています。

糖化に対してできること

糖化への対処は、特別な薬やサプリメントではなく、血糖の管理・禁煙・紫外線防御が中心です。

診察室でお伝えしているのは、次のことです。

  1. 血糖を上げすぎない — 健診で血糖値やHbA1cの指摘を受けた場合は、そのままにせず、かかりつけの医療機関でご相談ください。肌のためというより、まず全身のための話です。食べる順序を野菜や汁物から始める、間食の回数を減らすといった工夫も、血糖の急な上昇を抑える方向に働きます。
  2. 禁煙する — 喫煙は酸化ストレスを通じて糖化に関わるだけでなく、皮膚の血流や創傷の治りにも影響します。糖化だけを理由に禁煙をご提案しているわけではありませんが、この文脈でも一致します。
  3. 紫外線を防ぐ — 日焼け止めを、2〜3時間ごとに、やや厚めに塗布してください。年間を通じて必要です。塗る量が足りないと表示どおりの効果は出ませんので、量を確保することと、塗り直しの間隔を保つことが大切です。日傘や帽子、日陰を選ぶ方法も組み合わせてください。

この3つに共通しているのは、どれも肌だけの話ではないということです。血糖の管理も禁煙も、本来は全身の健康のために行うものです。糖化という切り口は、その積み重ねが肌にも現れるということを示しているにすぎません。逆に言えば、肌のためだけに何かを新しく始めなくても、ここから取りかかることができます。

睡眠や運動についてもよくご質問をいただきます。食後に体を動かすことは血糖の上昇をゆるやかにする方向に働きますし、睡眠不足は血糖の調節を乱すことが知られています。ただしこれらが皮膚のAGEs蓄積をどれだけ変えるかを、人で直接確かめた研究があるわけではありません。全身の管理として理にかなっている、という位置づけでお考えください。

食事に含まれるAGEsについては、正直にお伝えしておきたいことがあります。

オランダで行われた住民調査(主に欧州系の2,515人)では、食事から摂る3種類のAGEsの推定摂取量と、中央値で5年後に測定した皮膚のAGEs蓄積量との関連が調べられました。その結果、全体では、いずれも関連が認められませんでした。糖尿病と慢性腎臓病の方を除いた解析でのみ、そのうち1種類に弱い正の関連が見られています。

つまり、食品に含まれるAGEsを減らすことに労力をかけるより、血糖が上がりにくい食べ方を続けるほうが、現時点では確かな方向だと考えています。

日々のスキンケアの考え方については、こちらにまとめています。

→ 正しいスキンケア

糖化した肌は元に戻るのか

いったん糖化したコラーゲンが元に戻るかどうかについては、まだ断定的なことは言えません。

コラーゲンは体のなかで作り替えられていますが、その速度や、蓄積した糖化産物がその後どうなるのかについて、人の皮膚で確かめられていることは限られています。戻ると申し上げることも、戻らないと申し上げることも、いまの段階ではできません。

そのうえでお伝えできるのは、これ以上増やさないという方向には意味がある、ということです。糖化はある時点で完結する出来事ではなく、毎日の積み重ねで進んでいく反応だからです。今日からの生活が関わるのは、これから蓄積する分です。

糖化は測れるのか

皮膚から糖化の蓄積を推定する機器はありますが、一般的な皮膚科診療に組み込まれた段階ではありません。当院では導入していません。

用いられているのは、皮膚自家蛍光(skin autofluorescence、SAF)という方法です。AGEsの一部が蛍光を発する性質を利用して、腕に光を当て、針を刺さずに推定します。学会などで実機を目にする機会はあります。

集団を対象とした研究では、この値が糖尿病や心血管疾患、死亡の予測に役立つことが報告されています。一方で、個人を測る場合には、測定の信頼性を下げる要因が複数あることが指摘されています。具体的には、皮膚の色(メラニンが蛍光を吸収します)、急性の病気、激しい運動の後の一時的な変動などです。

2025年には、国内の研究グループから、毛髪に含まれるAGEsを質量分析で測る方法も報告されています。こちらも研究の段階にあります。

したがって現時点では、この測定値を個人の肌年齢や、治療の効果判定に用いることはできません。当院が導入していない理由も、ここにあります。

いまの時点で言えないこと

抗糖化をうたう成分は研究の段階にあり、現時点で確立した治療とは言えません。

糖化について調べると、それに働きかけるとされる化粧品やサプリメントの情報に行き当たると思います。個々の商品の良し悪しを、ここで申し上げることはしません。お伝えできるのは、研究がどこまで進んでいるかという事実です。

いまの時点で、根拠をもって言えないことは、次の4つです。

  1. 化粧品が、皮膚のなかにすでにできた糖化の架橋を取り除けるということ
  2. サプリメントによって、肌が若返るということ
  3. 食事のAGEsを減らすだけで、しわや色素沈着が改善するということ
  4. 皮膚自家蛍光の値を、個人の肌年齢や治療の効果判定に用いること

もうひとつ、知っておいていただきたいことがあります。黄ぐすみや色素沈着と糖化を結ぶ研究は近年進んでいますが、その多くは培養細胞や三次元の皮膚モデルで行われた段階のものです。人の肌で同じことが起きると確かめられたわけではありません。

なぜ人での研究が少ないのか、という疑問はもっともだと思います。糖化は年単位で進む反応です。ある成分を使った群と使わなかった群を、皮膚の変化が出るだけの年数にわたって追いかけ、しかも食事や喫煙、紫外線といった条件をそろえるというのは、実際にはとても難しいことです。そのため、まず細胞やモデルで仕組みを確かめる段階にとどまっている、という事情があります。

これは、効果がないと確かめられたという意味ではありません。確かめられていない、という状態です。この2つは別のことなので、混同しないようにお伝えしておきます。

この領域の研究はいまも動いています。人の肌で確かめられたことが増えれば、お伝えできる内容も変わっていきます。ここに書いたのは、2026年9月の時点での線引きです。

よくある質問

Q. 糖化と酸化は何が違いますか?

糖化は糖がたんぱく質と結びつく反応、酸化は活性酸素によってたんぱく質や脂質が変化する反応で、別のものです。ただし両者は互いを促進する関係にあり、実際の皮膚では同時に進んでいます。

Q. 糖尿病ではなくても糖化は進みますか?

進みます。糖化は加齢に伴って誰にでも起こる反応です。糖尿病では血糖が高い分だけ進みやすくなりますが、糖尿病でない方に起こらないということではありません。

Q. 糖質を抜けば糖化は防げますか?

糖質を極端に制限することはご提案していません。糖は体の通常の代謝でもつくられるため、食事から抜いても糖化がなくなるわけではなく、極端な制限は別の不調につながります。急激に血糖を上げない食べ方を続けるほうが現実的です。

Q. 糖化は何歳から気にすればよいですか?

特定の年齢から始まるものではありません。加齢とともに少しずつ蓄積していく反応なので、気づいたときから、血糖・禁煙・紫外線という3つを整えていただければ十分です。

Q. 化粧品で糖化対策はできますか?

化粧品が皮膚のなかにできた糖化の架橋を取り除けるかどうかは、まだ確かめられていません。一方で、日々の洗浄と保湿、紫外線対策を続けることは、肌の状態を保つうえで意味があります。糖化に直接働きかけるものというより、土台を整えるものとしてお使いください。

Q. 皮膚科では糖化を測れますか?

当院では糖化の測定を行っていません。皮膚自家蛍光という方法はありますが、個人の状態を判定する検査として確立した段階にはないためです。

まとめ

糖化は、余った糖がたんぱく質と結びついてAGEsをつくる反応で、肌の黄色いくすみや弾力の低下に関わると考えられています。対処の中心は、血糖の管理・禁煙・紫外線防御です。

この記事で、言えないことをあえて多く書いたのには理由があります。糖化は、医学の側の理解が固まる前に、美容の言葉として広まった領域です。だからこそ、どこまでが確かめられていて、どこからが研究の途中なのかを、はっきりさせておく必要があると考えました。

何かを足すとしても、その前に土台を整えておくほうが確かです。私が診療で大切にしているのは、年齢を重ねた肌を否定するのではなく、その方の自然な美しさが保たれる形を一緒に探すことです。

→ 加齢と美しさについての考え方

→ ホームケア・ドクターズコスメ

肌の色調やハリの変化が気になる場合、その背景には糖化以外の要因が重なっていることがほとんどです。何が起きているのかを一緒に整理するところから始めますので、お気軽にご相談ください。

記事監修者

藤本栄大 院長

ふじもと皮フ科クリニック 院長

藤本 栄大(ふじもと えいた)

医学博士

日本皮膚科学会皮膚科専門医・医学博士

防衛医科大学校卒業後、自衛隊病院・防衛医科大学校附属病院での勤務を経て日本皮膚科学会皮膚科専門医を取得。同大学院在籍中に米国UC Davis(皮膚科学教室)へ留学し医学博士を取得。海上幕僚監部衛生企画室勤務、南極観測船「しらせ」医務長(第54次)、Pacific Partnership参加等を経て、2015年にふじもと皮フ科クリニックを開院。日本医科大学千葉北総病院との共同研究を継続的に実施。

院長プロフィール・研究業績はこちら →

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