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ふじもと皮フ科クリニックの医療コラム

一度やめたリンヴォック(ウパダシチニブ)は、再開しても効きますか|アトピー性皮膚炎 再開12週の実臨床データ

2026年8月30日

一度やめたリンヴォック(ウパダシチニブ)は、再開しても効きますか|アトピー性皮膚炎 再開12週の実臨床データ

ふじもと皮フ科クリニック院長藤本です。今回ご紹介するのは、私(藤本栄大)が共著者として参加した研究です。

※本記事は、2025年に Clinical and Experimental Dermatology に掲載された研究をもとに解説しています。

※アトピー性皮膚炎についてはこちらのアトピー性皮膚炎 診療ページをご覧ください。

この研究は何を調べたのか

ウパダシチニブ(製品名リンヴォック)は、体の中で炎症の指令を伝える経路のうち、JAK1と呼ばれる部分をふさぐ飲み薬です。中等症から重症のアトピー性皮膚炎に使われています。

この薬は、いったん中止することがあります。妊娠のご希望、手術の予定、感染症、ご事情による通院の中断など、理由はさまざまです。そのときに患者さんが心配されるのが、一度やめた薬を、また始めても同じように効くのだろうかという点です。

本研究は、その問いに実際の診療データで答えたものです。中等症から重症のアトピー性皮膚炎で、ウパダシチニブを中止したのちに再開した日本人の患者さん62名を対象に、再開してから12週間の効果と安全性を後ろ向きに調べました。内訳は15mgを使用した方が38名、30mgを使用した方が24名です。

なぜこの研究が重要なのか

アトピー性皮膚炎は長く付き合う病気です。数年単位で治療を続けるあいだには、薬を止めざるをえない場面が出てきます。

ところが、中止したあとに再開したときの成績は、これまで実際の診療現場でくわしく調べられていませんでした。やめてしまったら、もう元のようには効かないのではないか。そう考えて中止をためらう方も、逆に中止したまま再開に踏み切れない方もいらっしゃいます。

治療を始めるかどうかを決めるとき、途中でやめられるか、やめてもまた戻れるかが分かっていることは、思っている以上に大きな安心につながります。本研究は、その判断材料を示した点に意義があります。

研究でわかったこと

1. 再開してから12週で、多くの方が改善した

皮疹の面積と重症度をあらわす指標EASIが、治療前とくらべて75%以上改善した方の割合は、15mg群で84%、30mg群で87%でした。90%以上改善した方は両群とも57%、症状がほぼ消失した状態にあたる100%改善は15mg群で19%、30mg群で17%でした。

かゆみの強さをご自身で10段階で評価する指標PP-NRSも、EASIとあわせて、治療前とくらべて統計的に意味のある差をもって低下していました(いずれも P = 0.01)。

2. 15mgと30mgで、結果は同じ水準だった

用量の違いによる大きな差は見られませんでした。再開時に必ずしも高い用量に戻さなくてよい可能性を示すもので、その方の状態に合わせて選べる幅があるということになります。

3. 安全性

観察期間中に報告された有害事象は軽度または中等度にとどまり、重篤な有害事象および死亡例はありませんでした。

ただしこれは62名を対象とした後ろ向きの研究です。すべての方に同じ結果が出ることを示すものではなく、効果の出方には個人差があります。

皮膚科診療にどう活かされるのか

この結果は、診察の場で次のようにお伝えできることを意味します。

  • 事情ができたときに、いったん中止するという選択をとりやすくなります
  • 中止したあとでも、再開という道が残っています
  • 再開するときの用量は、状態に合わせて相談して決められます

治療を始める前の段階で、この見通しをお伝えできることに意味があると考えています。一度始めたら一生やめられないのではないかという不安は、全身の治療に進むかどうかを迷われる方から実際によくうかがうためです。

外用薬から全身療法へ進む条件と当院での扱いは、アトピー性皮膚炎のページをご覧ください。

※治療は症状や体質によって異なるため、医師と相談しながら進めることが大切です。

リンヴォックをご希望の方は日本医科大学千葉北総病院を紹介しております。まずは当院の一般皮膚科外来でご相談ください。

当院からのメッセージ

本研究は、萩野医師(日本医科大学千葉北総病院)をはじめとする共同研究者と当院が力を合わせて取り組んだ成果です。

臨床試験は、決められた期間、決められた条件のもとで行われます。けれども実際の診療では、予定どおりに進まないことのほうが多いものです。中断があり、再開があり、生活の都合があります。その現実のなかで何が起きるのかを積み上げていくことが、日常の診療から生まれる研究の役割だと考えています。

治療を続けるかどうか、いったん休むかどうかで迷われている方は、一度ご相談ください。

記事監修者

藤本栄大 院長

ふじもと皮フ科クリニック 院長

藤本 栄大(ふじもと えいた)

医学博士

日本皮膚科学会皮膚科専門医・医学博士

防衛医科大学校卒業後、自衛隊病院・防衛医科大学校附属病院での勤務を経て日本皮膚科学会皮膚科専門医を取得。同大学院在籍中に米国UC Davis(皮膚科学教室)へ留学し医学博士を取得。海上幕僚監部衛生企画室勤務、南極観測船「しらせ」医務長(第54次)、Pacific Partnership参加等を経て、2015年にふじもと皮フ科クリニックを開院。日本医科大学千葉北総病院との共同研究を継続的に実施。

院長プロフィール・研究業績はこちら →

【原著論文】

著者名: Teppei Hagino, Hidehisa Saeki, Eita Fujimoto, Naoko Kanda
論文タイトル: Effectiveness and safety of upadacitinib retreatment after withdrawal in moderate-to-severe atopic dermatitis: a retrospective study
掲載誌: Clinical and Experimental Dermatology 2025;50(4):770-778
DOI: https://doi.org/10.1093/ced/llae410

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