2026年2月11日
ふじもと皮フ科クリニック院長藤本です。
アトピー性皮膚炎の治療はここ数年で劇的に進化し、多くの選択肢が登場しています。しかし、非常に効果が高いとされる新しいお薬を使っても、思うように症状が改善しない治療抵抗性のケースも存在します。
今回は、当院が共同研究に携わった、一つのお薬が効かなかった時に、次の一手がどう働くかを明らかにした最新論文をご紹介します。
※本記事は、2025年に米国皮膚科学会誌(JAAD)に掲載された研究をもとに解説しています。
① この研究は何を調べたのか
アトピー性皮膚炎の強力な治療薬であるウパダシチニブ(飲み薬)で十分な効果が得られなかった患者さんに対して、別のアプローチである注射薬トラロキヌマブ(製品名:アドトラーザ)に切り替えた際、1年間(48週間)でどのくらい効果が出るのかを調査しました。
② なぜこの研究が重要なのか
ウパダシチニブは非常に優れたお薬ですが、体質や症状によって、どうしても十分な効果が出ない方がいらっしゃいます。これまでは、その次にどのお薬を選ぶべきか、具体的な長期データが不足していました。
この研究は、飲み薬(JAK阻害薬)という仕組みで改善しなかった方でも、注射薬(抗体製剤)という全く別の仕組みのお薬に切り替えることで、再び症状を改善できる可能性を科学的に示したものです。
③ 研究でわかったこと(主なポイント)
1年間にわたる追跡調査の結果、以下のポイントが明らかになりました。
● 切り替えによる再改善
ウパダシチニブが効かなかった患者さんにおいても、トラロキヌマブに切り替えることで、湿疹の赤みや痒みが着実に改善していくことが確認されました。
● 1年間にわたる安定した効果
切り替えた後の効果は一時的なものではなく、48週間にわたって安定して維持されることがわかりました。
● 作用メカニズムの違いの重要性
細胞の中のスイッチを抑える飲み薬が効かなくても、細胞の外で炎症の原因物質をキャッチする注射薬であれば効果を発揮する場合がある。つまり、治療の仕組みを変えることの有効性が示されました。
④ 皮膚科診療にどう活かされるのか
この薬が効かなかったから、もう打つ手がないと諦める必要はありません。
この研究結果により、私たちは患者さんに対して次はこのタイプのお薬を試してみましょう。1年間のデータでも良好な結果が出ていますよと、明確な根拠に基づいた次の一手を提案できるようになりました。患者さんの体質に合わせた最適な治療のスイッチのタイミングを見極めるための重要な指標となります。
⑤ 当院からのメッセージ
今回ご紹介した研究は、ふじもと皮フ科クリニックと、当院で非常勤として診療にあたっている萩野医師、そして日本医科大学千葉北総病院との共同研究によって実現した成果です。
私たちは、大学病院と連携して実際の現場で何が起きているのかを分析し、より高度な医学的知見を蓄積しています。こうした活動は、地域にお住まいの患者さんへ根拠のある、安心できる医療を提供することに直結しています。
医学の進歩に貢献しながら、それを日々の診療に還元する。私たちはこれからも、一人ひとりの患者さんに寄り添った、科学的に正しい選択をサポートしてまいります。提供してまいります。
※治療は症状や体質によって異なるため、医師と相談しながら進めることが大切です。
リンヴォックをご希望の方は日本医科大学千葉北総病院を紹介しております。
【原著論文】
著者名: Teppei Hagino, Hidehisa Saeki, Eita Fujimoto, Naoko Kanda
論文タイトル:Effectiveness of tralokinumab for upadacitinib-refractory atopic dermatitis: 48-week retrospective study
掲載誌: Journal of the American Academy of Dermatology
掲載年: 2025年
DOI: 10.1016/j.jaad.2025.06.027
URL: https://doi.org/10.1016/j.jaad.2025.01.052
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