2026年5月03日

ふじもと皮フ科クリニック院長藤本です。
顔に青っぽいシミのようなものがある、鏡を見ていて気づいた、化粧で隠しているけれど何なのかわからない。そうした相談で受診される方は少なくありません。
顔の青い色は、まったく違うものが同じように見えているだけです。生まれつきのあざ、20代から出てくる色素斑、ぶつけた覚えのない内出血、そして肝斑。それぞれ治療法が違い、レーザーを当てると悪くなるものも混じっています。今回は、その見分け方を整理します。
※あざ全般の診療についてはあざ治療のページもあわせてご覧ください。
顔にできた青いシミ、青いあざの正体
顔の青い色の多くは、色素が皮膚の深い層にあることを示すサインです。
皮膚の色素は本来、いちばん外側の表皮の中で作られ、新しい細胞に押し上げられて垢とともに落ちていきます。表皮にある色素は、私たちの目には茶色や褐色に見えます。老人性色素斑やそばかすが茶色いのはこのためです。
ところが色素が表皮の下の真皮まで達すると、同じメラニンでも青みを帯びて見えます。短い波長の光が皮膚の中で散乱する一方、長い波長の光は深部のメラニンに吸収されるためで、チンダル現象と呼ばれます。つまりメラニンによる色であれば、青く見えている時点で色素は表皮ではなく真皮にあると考えられます。
この違いが、そのまま治療法の分かれ目になります。真皮にある色素は表皮の新陳代謝では運び出されません。だから何年たっても自然には薄くならず、塗り薬も届かないのです。
ただし、内出血のようにメラニンではなく血液の色が青く見えている場合もあります。まずここを分けるところから始めます。
数日で色が変わるなら、あざではありません
赤紫から青、緑、黄色へと色が移り変わるものは内出血で、多くは2週間ほどで消えます。
突然できた顔の青あざを心配して受診される方のうち、かなりの割合が内出血です。母斑との見分けは、時間の経過を追うのがいちばん確実です。
- 内出血は血液中のヘモグロビンが分解される過程で色が動きます。母斑の色は動きません
- 内出血は押すと痛むことがあります。母斑は痛みません
- 内出血はふつう数日から2週間で消えます。長引くこともありますが、母斑は消えません
ただし、ぶつけた覚えがないのに繰り返し出る、血が止まりにくい、点状の出血が広い範囲に出るといった場合は、皮膚以外の原因を調べる必要があります。内出血についてはなかなか消えない青あざの原因と青あざを早く治す方法で詳しく解説しています。
青あざと青いシミを分ける早見表
出はじめた年齢、左右対称かどうか、白目と口の中に色がついているか。この3つでほとんど絞り込めます。
| 太田母斑 | ADM | 肝斑 | 老人性色素斑 | 内出血 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 出はじめる時期 | 生まれてすぐから1歳ごろ、または思春期ごろ | 多くは思春期以降。平均は20代後半から30代という報告 | 30代以降 | 40代以降 | 数日前 |
| 左右 | 片側が多い | 両側 | 両側 | 決まっていない | 決まっていない |
| 色 | 青から青灰色。青紫褐色を帯びることも | 灰褐色から青灰色。褐紫色を帯びることも | 淡い褐色 | 褐色 | 赤紫から黄色へ変化 |
| 形 | 広がりのある斑 | 数ミリの点が集まる | まとまった面として広がる | 輪郭のはっきりした斑 | 不定形 |
| 出やすい場所 | 下まぶたと頬に最も多い。額、目じりにも | 頬骨が中心。額、まぶた、鼻にも | 頬骨、額。目の周りを避けることが多い | 頬、こめかみ | ぶつけた場所 |
| 白目と口の中 | 色がつくことがある | つかないのがふつう | つかない | つかない | — |
| 濃さの変化 | 変わらない | 変わらない | 季節や体調で動く | ゆっくり濃くなる | 2週間ほどで消えることが多い |
この表でいちばん決め手になるのは、下から2番目の白目と口の中の行です。ここに色がついていれば太田母斑を強く疑います。ADMでここに色がつくことはまれですが、報告がないわけではありません。診察室で最初に確認するのもここです。
この表は、名前のわからない色を見分けるためのものです。色素が皮膚のどの深さにあるか、塗り薬が効くかどうかまで含めた詳しい鑑別は太田母斑・ADMのページに表で整理してあります。
太田母斑は顔の片側に出て、自然には消えません
1939年に太田正雄が報告した、顔の片側に現れる青灰色のあざです。
下まぶた、頬、こめかみ、額、鼻翼などに、境界のはっきりしない青から青灰色の斑として現れます。生まれてまもなく気づかれるものと、思春期になって出てくるものがあります。
太田母斑を他と分ける最大の特徴が、白目と口の中に及ぶことです。太田母斑の患者280名を調べた国内の報告では、白目に色がつく眼球メラノーシスが49%、口の中に色がつく口腔メラノーシスが14%に認められています。白目に色がついている場合は緑内障の合併が報告されているため、眼科と連携して経過をみることをおすすめしています。
太田母斑は診療報酬の通知に病名が明記されており、保険診療でレーザー治療を受けられます。病態、レーザーの機種ごとに異なる保険の回数、受診の流れについては太田母斑・ADMのページで詳しく解説しています。
ADMは大人になってから両側の頬骨に出てきます
ADMは後天性真皮メラノサイトーシスの略で、多くは思春期以降に、両側の頬骨に数ミリの点が集まって現れます。
太田母斑と同じく真皮に色素細胞が存在する状態ですが、臨床像はいくつもの点で異なります。
- 多くは思春期以降に現れ、平均は20代後半から30代という報告があります。太田母斑のように生まれつきではありません
- 左右両側に対称的に出ます
- 女性は頬骨部、男性は額の両側に出やすいとされます
- 色調は灰褐色から青灰色で、褐紫色を帯びることもあります
- びまん性に広がるのではなく、数ミリの小さな斑が集まって見えます
- 白目や口の中に色がつくことは、太田母斑ではしばしばみられますが、ADMではまれです
ここで正直にお伝えしておきたいことがあります。ADMという病名は、まだ完全には定まっていません。1965年に両側性太田母斑として報告され、1984年にHoriらが後天性両側性太田母斑様色素斑と名づけました。その後、顔面対称性後天性真皮メラノサイトーシスという呼び方も用いられ、呼び名は今も一つに定まっていません。太田母斑の一型とみる立場と、区別して扱う立場の両方があります。
日本皮膚科学会、日本形成外科学会、日本美容皮膚科学会がまとめた美容医療診療指針では、ADMのレーザー治療について独立した項目が設けられ、治療を希望する患者には強く推奨するとされています。安全性については、比較的安全であると評価されています。同じ項目の中で、太田母斑との違いが7つの観点から整理されています。
一方で、ADMには広く合意された診断基準がまだ定められていません。発症の時期と見た目から臨床的に判断し、迷う場合はダーモスコピーで拡大して観察します。当院では、断定できることと断定できないことを分けてお伝えするようにしています。
肝斑との見分けが、いちばん難しくていちばん大事です
ある報告ではADMの24.0%に肝斑が合併しており、気づかずにレーザーを照射すると肝斑が悪化したとされています。
これがこのページでいちばんお伝えしたいことです。ADMと肝斑はどちらも成人女性の頬骨のあたりに左右対称に出るため、見分けがつきにくい。中国で1268名を調べた報告では、ADMの24.0%に肝斑の合併がみられ、QスイッチのヤグレーザーによってADMを治療したあとに肝斑が悪化したとされています。合併を見落としたままレーザーを当てると、ADMは薄くなっても肝斑がかえって濃くなることがあります。
診察では次のような点を手がかりにしています。
- 肝斑はまとまった面として左右対称に広がり、目の周囲を避けることが多いとされます。ADMは小さな点の集まりです
- 肝斑は夏に濃く冬に薄いなど、季節や体調で濃さが動きます。ADMは動きません
- 肝斑はこすったり紫外線を浴びたりすると濃くなります
- ADMの斑が大きく融合していると、点の集まりという手がかりが失われて判断が難しくなります
受診前にご自分で確かめられること
数か月前や1年前の写真を探して、いまの顔と見比べてみてください。濃さが変わっているなら肝斑の成分が混じっている可能性があり、まったく変わっていないならADMや太田母斑の色です。スマートフォンの写真で十分です。診察のときにお持ちいただけると、判断の助けになります。
塗り薬で消えない理由と、レーザーで消える理由
真皮の色素は新陳代謝で運び出されないため、外用薬では届きません。
ハイドロキノンやトレチノインといった外用薬は、表皮でメラニンが作られる過程や表皮の入れ替わりに働きかけるものです。表皮性のシミである老人性色素斑や肝斑には意味がありますが、真皮まで届いて色素細胞そのものに作用するわけではありません。太田母斑やADMに外用薬が効きにくいのはこのためです。
そこで用いるのがQスイッチレーザーやピコ秒レーザーです。極めて短い時間に強い光を当てると、周囲の組織への影響を抑えながら、色素が選択的に熱と衝撃を受けて壊れます。壊れた色素は体内の細胞に運ばれて処理され、時間をかけて薄くなっていきます。
当院では2台を使い分けています。
- トライビームPREMIUM QスイッチNd:YAGレーザー。1064ナノメートルの波長が深いところの色素まで届きます
- ディスカバリーピコプラス ピコ秒レーザーに加え、Qスイッチルビーの694ナノメートルとQスイッチNd:YAGを備えています
いずれも1回では終わりません。皮膚が落ち着くのを待つため、3か月以上の間隔をあけて複数回行うのが一般的です。費用は料金案内をご覧ください。
かさぶたができない、かえって濃くなった
治療がうまくいかなかったと感じられる原因の多くは、炎症後色素沈着、肝斑の見落とし、そして途中でやめてしまうことの3つです。
かさぶたができないことを心配される方がいらっしゃいますが、これ自体は失敗ではありません。かさぶたができるかどうかは、あざの深さと照射の条件によって変わります。表面が変化しなくても、真皮の色素は反応しています。
照射から2週間から1か月ほどたって、治療前より濃くなったように見えることがあります。これは炎症後色素沈着といって、皮膚が刺激を受けたあとに一時的にメラニンが増える反応です。多くは数か月かけて自然に薄くなります。この時期に強くこすったり、日焼け止めをやめてしまったりすると長引きます。
- 照射後は季節を問わず日焼け止めを使い、日中は帽子や日傘も併用してください
- 洗顔とスキンケアのときに、照射した部分をこすらないでください
- 濃くなった時期に自己判断で治療を中断すると、そこで止まってしまいます。まず受診してください
そしてもう1つが、前の章で述べた肝斑の合併です。濃くなった原因が炎症後色素沈着なのか肝斑の悪化なのかで、その後の対応が変わります。肝斑が動いているなら、レーザーを続ける前に内服と外用と遮光で肝斑を落ち着かせるほうが先です。
保険が使えるかどうかが施設で分かれる理由
診療報酬の通知に、ADMという病名が一度も出てこないからです。
皮膚レーザー照射療法について定めた診療報酬 J054-2 の通知は、機種ごとに対象となる病名を挙げています。
- 色素レーザー照射療法 単純性血管腫、苺状血管腫、毛細血管拡張症
- Qスイッチ付ルビーレーザー照射療法 太田母斑、異所性蒙古斑、外傷性色素沈着症、扁平母斑など
- Qスイッチ付アレキサンドライトレーザー照射療法とQスイッチ付ヤグレーザー照射療法 太田母斑、異所性蒙古斑、外傷性色素沈着症
後天性真皮メラノサイトーシスもADMも、どこにも出てきません。加えて通知には、単なる美容を目的とした場合は算定できないと明記されています。つまり、太田母斑と診断できるものは保険で治療でき、ADMとしか言えないものは施設によって扱いが分かれる。これが実態です。
ADMを確実に保険で治療できると書いているページも、必ず自費だと書いているページも見かけますが、通知の文面からはどちらとも言い切れません。当院では診察のうえで、どの病名で治療するのか、保険診療と自費診療のどちらになるのかをご説明します。
なお、通知でいう一連とは算定の単位を指すもので、実際に照射をあける間隔とは別のものです。太田母斑と異所性蒙古斑については、使うレーザーの機種によって保険で受けられる回数の考え方が違います。この点は太田母斑・ADMと異所性蒙古斑のページに整理してあります。
よくあるご質問
顔の青いシミは自分で見分けられますか
出はじめた年齢、左右対称かどうか、白目と口の中に色がついているか、濃さが季節で動くか。この4点である程度は絞り込めます。ただしADMと肝斑の合併は見た目だけでは判断が難しく、ここを間違えると治療でかえって濃くなることがあります。レーザーを検討される段階では、一度診察を受けてください。
太田母斑は美人に多いというのは本当ですか
そうした医学的な根拠はありません。太田母斑は女性に多いと報告されていますが、患者280名を調べた国内の報告は、美容上の悩みで受診された方の集計であるため実際の男女差をそのまま表しているとは限らない、と留保をつけています。顔の色調の変化は女性のほうが気にして受診されやすく、その分だけ統計に多く現れます。あざの有無と容姿を結びつける根拠はありません。
太田母斑とADMが両方あることはありますか
両方が併存した症例の報告があります。どちらも真皮に色素細胞が存在するという点では共通しており、明確に線を引けない例もあります。この場合も、白目と口の中に色がついているか、片側なのか両側なのか、いつから出ているのかを手がかりに判断していきます。
治療のあと日焼け止めは必要ですか
必要です。照射後の皮膚は紫外線に反応しやすく、炎症後色素沈着が長引く原因になります。環境省の紫外線環境保健マニュアルによれば、1年間の紫外線量のおよそ7割から8割が4月から9月に集中しますが、冬でもゼロにはなりません。季節を問わず毎日使ってください。塗る量が少ないと表示どおりの効果が出ないため、同マニュアルでは一円玉を置いたくらいの面積が埋まる量を2回に分けて塗る方法が紹介されています。こすらずのせるように塗ってください。
1回のレーザーで消えますか
1回では終わりません。真皮の色素は少しずつしか運び出されず、3か月以上の間隔をあけて複数回の照射が必要です。また、必ず完全に消えると約束できる治療ではありません。改善の程度には個人差があり、色素が薄く残ることもあります。治療の前に、どのくらいの回数と期間を見込むのかをご説明します。
当院からのメッセージ
顔の青いシミやあざは、長く付き合ってこられた方ほど、いまさら聞けないと感じておられることが多いように思います。けれど見分けがついていないまま自己流のケアを続けると、治せるものを治さないまま時間が過ぎてしまいます。
当院ではQスイッチ系のレーザーを2台備えており、保険診療と自費診療の両方に対応しています。まずは何であるかをはっきりさせるところからで構いません。診断がついてから治療をどうするかを一緒に考えます。
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参考文献
- 森啓之,古谷浩,渡辺晋一:太田母斑患者280名の統計的考察.日本皮膚科学会雑誌 109(11):1603-1607,1999.
- Hori Y, Kawashima M, Oohara K, Kukita A:Acquired, bilateral nevus of Ota-like macules.Journal of the American Academy of Dermatology 10(6):961-964,1984.
- Wang B, et al:Induction of melasma by 1064-nm Q-switched neodymium:yttrium-aluminum-garnet laser therapy for acquired bilateral nevus of Ota-like macules.Journal of Dermatology 43(6):655-661,2016.
- 日本皮膚科学会,日本形成外科学会,日本美容皮膚科学会:美容医療診療指針 令和3年度改訂版.
- 厚生労働省:診療報酬の算定方法.医科診療報酬点数表 J054-2 皮膚レーザー照射療法.
- 環境省:紫外線環境保健マニュアル2020.
監修 ふじもと皮フ科クリニック院長 藤本栄大(日本皮膚科学会認定皮膚科専門医)







