2026年1月03日
京都芸術大学で学び墨象アーティストの宮村弦先生に師事し、現在も墨象に取り組む私の美容医療へのあり方。シミ治療は「ノイズ除去」、たるみ治療は「機能回復」。アートの余白の美学を通じ、私が目指す「自然な美しさ」と「エイジング=深化」という哲学についてお話しします。
はじめに:美意識のルーツ — アートと医療の交差点
皮膚科美容皮膚科クリニックの院長として診療にあたる傍ら、私は今も表現者としての時間を持っています。 京都芸術大学を卒業し、現在も墨象(ぼくしょう)という前衛的な書のアートに取り組んでいます。
なぜ、医師がアートなのか? そう思われるかもしれません。 しかし私の中では、筆を持って紙に向かう時間と、医療機器を持って患者様の肌に向き合う時間は、ひとつの美意識でつながっています。
それは、「作為的な美しさよりも、生命力を感じる自然な美しさを尊ぶ」という姿勢です。
「墨象」が教えてくれる、引き算の美学
墨象の世界では、ただ黒く塗りつぶせば良い作品ができるわけではありません。 むしろ大切なのは、余白です。 書かれていない部分にどのような空間の広がりを感じさせるか。一瞬の筆の動きの中に、いかにその瞬間の生命エネルギーを込めるか。
この感覚は、私の美容医療に対する姿勢そのものです。 顔の造作を不自然に埋めたり、過剰に引っ張り上げたりすることは、絵画で言えば余白を殺してしまう(バランスを崩す)行為に似ています。
私が目指すのは、その方が本来持っている骨格や表情の魅力を邪魔している要素を取り除き、ご自身の持つ余白(本来の美しさ)を際立たせることなのです。
「作る」のではなく「戻す」
当院では現在、メスを使わないレーザーや医療機器による治療を主軸としています。 なぜなら、このアプローチこそが自然な美しさを守りながら、機能を回復させる理にかなった手段だと考えているからです。
シミ治療は「本来の透明感への回帰」
シミを取るという行為を、私は人工的に肌を白く塗ることだとは捉えていません。 シミとは、紫外線や加齢、ホルモン変化によってメラニンが過剰蓄積し、本来の肌の透明感が覆い隠されてしまった状態です。 アートで言えば、美しい絵画の上に降り積もった埃や汚れを丁寧に拭き取るようなもの。 ノイズを取り払うことで、隠れていたご自身の本来の透明感を取り戻す。 これは新しい何かを作るのではなく、自然な状態へ戻す行為です。
たるみ治療は「組織機能の再活性化」
機械によるたるみ治療もまた、不自然な形を作るものではありません。 たるみの多くは、皮膚のコラーゲン減少や筋膜の緩みといった機能低下によって起こります。 HIFUやRFなどの医療機器は、弱くなった組織に熱エネルギーを与え、衰えた機能を医学的にサポートし、本来の張力を回復させる(再活性化する)ものです。 無理やり形を変えるのではなく、ご自身の持っている生命力を引き出して位置を戻す。これが私の考える自然な治療です。
脱毛もまた、美意識の一環として
自然さという観点では、医療脱毛もまた、私の美意識に通じています。 アートにおいて、作品の魅力を損なうノイズを省くように、日常生活における不快や煩わしさを取り除くことは、よりシンプルで洗練された生き方につながります。
毛があることが生物学的に自然であることは事実ですが、現代社会において整えられた清潔感をまとうことは、ご自身の輪郭をより美しく見せるための洗練された自然(身だしなみ)であると私は捉えています。
形成外科的なアプローチについて
現時点では、メスを使って形を大きく変える形成外科的な治療は、当院のメインではありません。 しかし、決してそれを否定しているわけではありません。
建物で言えば土台や骨組みから修復が必要な場合があるように、将来的に、患者様の自然な美しさを引き出すためにどうしても外科的な手技が必要だと判断すれば、選択肢の一つとして取り入れていく可能性はあります。
ただ、どのような手段を取るにせよ、私の根底にある「不自然な造形は作らない」「あくまでその人の本来のバランスを整える」という美意識の軸がブレることはありません。
年を重ねることは「劣化」ではなく「深化」
アートの世界において、完成したばかりの作品も美しいですが、時代を経て風合いを増した作品には、何とも言えない奥深さが宿ります。 人間も同じではないでしょうか。
一般には「老化=劣化」と捉えられがちですが、私は「老化=深化(しんか)」だと考えています。
若い頃の張り詰めた美しさも素敵ですが、経験を重ね、酸いも甘いも噛み分けた大人の表情には、若い頃には決して出せない「深み」があります。 私が美容医療で提供したいのは、その「深化」の邪魔をする要素(疲れて見える影や、老けて見える色ムラ)を取り除くお手伝いです。
表現者として、医師として
私は、患者様の顔を私の作品にしたいわけではありません。 患者様ご自身が、ご自身の人生という作品を、自信を持って表現できるようにサポートする黒子でありたいと願っています。
「人工的な美しさではなく、深みのある自然な美しさを」
もし、私のこうした美意識や、アートを通じた感性に共感していただけるなら、これほど嬉しいことはありません。 あなたの「深化」する美しさを、医学と感性の両面から支えさせてください。

