2026年3月29日

「この薬、本当にずっと飲み続けて大丈夫なのかな……」
乾癬の治療中の方から、そんなお声をよくお聞きします。効果が実感できていても、「いつまで飲み続けるのか」「副作用は大丈夫か」という不安は、決して珍しくないことです。
今回ご紹介するのは、私(藤本栄大)が共著者として参加した研究です。
※本記事は、2026年に米国皮膚科学会誌(JAAD)に掲載された研究をもとに解説しています。
ソーティクツとは?——乾癬に使われる飲み薬の仕組み
中等症から重症の乾癬(かんせん)に対する飲み薬であるデュークラバシチニブ(免疫に関わるTYK2という酵素の働きを選択的に抑えるお薬)について、104週間(約2年間)使用した際の効果と安全性を調べた研究です。
特に今回の研究では、132名の日本の患者さんを対象に、これまで治療が難しいとされてきた陰部(デリケートゾーン)、頭皮、爪の3つの部位の乾癬に注目して、それぞれの部位で症状がどのように改善していくかを2年間にわたって詳しく追跡しました。結果として、いずれの部位においても長期にわたって症状の改善が持続することが確認されました。
※乾癬という病気の基本的な特徴・症状・治療の全体像については、こちらの乾癬診療ページをご覧ください。
2年間飲み続けた結果——皮膚はどう変わった?
乾癬は全身にさまざまな症状が現れる慢性の皮膚疾患ですが、中でも陰部・頭皮・爪に生じる乾癬は、患者さんのQOL(生活の質)に大きな影響を与える一方で、塗り薬が使いにくかったり、治療効果が出にくかったりと、治療上の課題が多い部位です。
しかし、これらの治りにくい部位に対するお薬の長期的な効果を、実際のクリニックや病院の患者さんのデータ(実臨床データ)で詳しく調べた研究は、これまでほとんどありませんでした。
この研究は、日本の実際の診療現場で2年間という長期にわたり、部位ごとの症状の推移やQOLの変化を丁寧に追ったものです。長期間にわたり安全に治療を続けられ、かつ難治部位でもしっかりと効果が持続することが示された点は、患者さんが安心して治療を選択するための非常に重要な情報となります。
研究でわかったこと
本研究から、主に以下の3つのポイントが示唆されました。
1. 2年間にわたり、難治部位の症状が継続して改善した
陰部・頭皮・爪のいずれの部位でも、治療開始から16週目までに症状が速やかに改善し、52週目にかけてさらに緩やかに改善が進み、その後104週目まで効果が安定して維持されました。特に陰部の乾癬では、104週目に92.3%の患者さんが「皮疹なし」または「ほぼ皮疹なし」の状態を達成しました。頭皮でも83.3%と高い改善率が得られています。
2. QOL(生活の質)も大きく改善した
皮膚疾患が日常生活に与える影響を測る指標(DLQI)においても、治療開始から速やかにスコアが改善し、104週目には64%の患者さんが「皮膚疾患による日常生活への影響がない」状態に達しました。見た目の症状だけでなく、患者さんの実感としての生活の質も大きく向上したことがわかりました。
3. 重篤な副作用はなく、安全性が確認された
約2年間の治療を通して、重篤な副作用や死亡例は報告されませんでした。治療に伴う有害事象は30名(22.7%)の患者さんで見られましたが、上気道感染や毛嚢炎といった比較的軽度なものが多く、全体として安全に治療を続けられるお薬であることが確認されました。
皮膚科診療にどう活かされるのか
この研究結果により、診察室で患者さんにデュークラバシチニブをご提案する際、「2年間使い続けても効果が長続きし、大きな副作用の心配が少ないお薬です」と、より具体的なデータに基づいて安心感を持ってお伝えできるようになります。
特に、陰部や頭皮、爪といった塗り薬が使いにくい部位や、これまで十分な改善が得られにくかった部位の乾癬に悩まれている患者さんにとって、飲み薬であるデュークラバシチニブは有力な治療選択肢の一つとなり得ます。一人ひとりの症状の部位や程度に合わせた、よりきめ細やかな治療計画を立てやすくなると考えています。
デュークラバシチニブによる治療をご希望の方は、当院から日本医科大学千葉北総病院へご紹介することが可能です。「注射は怖い」「飲み薬で長く治療を続けたい」とお考えの方は、まず当院の一般皮膚科外来でご相談ください。症状の部位・程度・これまでの治療歴をお聞きしたうえで、適切な医療機関へおつなぎします。
当院からのメッセージ
陰部・頭皮・爪の乾癬に苦しむ方へ——当院でできること
乾癬は長いお付き合いが必要になる病気だからこそ、「このお薬は本当に続けて大丈夫だろうか」という患者さんの不安に、データという裏付けをもってお応えしたい ── それが私たちの研究活動の原点です。
治療の選択肢が広がっている今だからこそ、お一人おひとりの症状や生活スタイルに合った方法を、一緒に考えていきたいと思っています。陰部や頭皮、爪など人に相談しづらい部位のお悩みも、どうぞ遠慮なくご相談ください。
【原著論文】
著者: Teppei Hagino, Hidebisa Saeki, Eita Fujimoto, and Naoko Kanda
タイトル: One hundred and four-week real-world effectiveness of deucravacitinib 6 mg for genital, scalp, and nail psoriasis: A prospective study in Japan
乾癬の治療で大切にしたいこと——当院からのメッセージ
年: 2026
DOI: https://doi.org/10.1016/j.jaad.2026.02.103
監修:ふじもと皮フ科クリニック 院長 藤本栄大 皮膚科専門医。日本皮膚科学会会員。日本医科大学千葉北総病院との共同研究を継続的に実施。医師紹介・研究業績はこちら

