2026年3月17日
日々の診療の中で、小さなお子様の乾燥肌やアトピー性皮膚炎に悩む親御さんからご相談を受けます。毎日薬を塗るのが本当に大変で…、嫌がって逃げるので、ついイライラしてしまいます、いつか綺麗に治る日が来るのでしょうか?といった切実なお声を聞くたび、私は我が家の昔の光景を鮮明に思い出します。
現在大学生になる私の息子と娘も、幼少期はアトピー性皮膚炎を患っており、毎日のように外用薬での治療を続けていました。
皮膚科医でありながら、スキンケアは妻任せだったあの日々
このような話ですと、お父さんが皮膚科の医師なんだから、お家でもきっちりお子さんの肌を管理されていたんですねと思われるかもしれません。しかし実のところ、当時の私は日々のスキンケアにほとんど関わっていませんでした。
皮膚科医ですから、頭ではどの薬をどう塗ればいいかという理屈は当然わかっています。しかし、それを毎日実践するというのは全く別の次元の話でした。 お風呂上がりのリビングは毎晩ちょっとした戦場です。ベタベタする軟膏を嫌がって逃げ回る子どもたち。それを追いかけ、なだめすかし、時には叱りながら、毎日根気よく全身に薬を塗り続けてくれていたのは妻でした。
私は日々の診療や仕事にかまけて、家庭での最も大変なケアの実践の部分を妻にすっかり任せきりにしてしまっていました。皮膚科医でありながら、妻がどれほどの労力とストレスを抱えて子どもたちの肌を守ってくれていたか。今振り返ると大きな反省と共に、言葉に尽くせないほどの感謝の念が湧いてきます。
選択肢が少なかった時代のアトピー治療
現在のアトピー性皮膚炎の治療は目覚ましい進歩を遂げています。当院でも使用しているような、劇的な効果を発揮する注射薬(バイオ製剤)が登場し、外用薬に関してもコレクチム軟膏やモイゼルト軟膏といった、ステロイドではない新しい選択肢が増え、治療の幅が大きく広がりました。
しかし、私の子どもたちが小さかった当時は、現在のような画期的な新薬はありませんでした。治療の基本は、昔ながらの一般的なステロイド外用薬、タクロリムス外用薬と保湿剤を組み合わせた治療。良くなったり、また悪化したりを繰り返す中で、このまま同じ治療を続けて大丈夫なのだろうかと、皮膚科医ではない妻は不安を抱えていたはずです。
妻の地道な継続がもたらした結果と現在の素肌
そういった中で頼りになったのは、ただひたすらに、妻が毎日続けてくれた地道なスキンケアでした。症状が出ている時はステロイドでしっかり炎症を抑え、良くなったら保湿剤でしっかりと肌のバリア機能を保つ。嫌がる子どもたちを前に心が折れそうになる日もあったと思いますが、妻は決して投げ出しませんでした。
その結果はどうなったか。大学生になった現在、二人ともアトピーの症状はほとんど見られなくなり、あの頃の苦労が嘘のように健康で綺麗な肌を保っています。 新薬がない時代であっても、正しいスキンケアを根気よく続けることがいかに将来の素肌を左右するか。私はそれを、教科書だけではなく、妻の努力と子どもたちの成長を通して身をもって教わりました。
毎日ケアを頑張るご家族をサポートするために
お子様の皮膚トラブルにおいて、薬の選び方や十分な量を塗ることはもちろん重要です。しかし、それがどれほど根気のいる、肉体的・精神的に大変な作業か。毎日お子様と向き合っているご家族が一番よくご存知だと思います。
だからこそ、私は診察室でちゃんと塗ってくださいねと、突き放すような教科書通りの言葉は言いたくありません。塗れない日があってもいい、疲れてしまう日があって当然です。
当院が家族で通える皮膚科を掲げているのは、お子様の肌の症状を治すだけでなく、ご自宅で孤独にケアを頑張る親御さんの負担や不安をサポートしたいという強い思いがあるからです。 赤ちゃんの頃の乳児湿疹から、思春期のニキビ、そして大人になってからの肌の悩みまで。最新の治療法をご提案しながら、毎日のご自宅でのケアが少しでも前向きで楽なものになるよう、ご家族の肌の健康を長期的にサポートいたします。日々のケアでお疲れの時や、不安なことがあれば、どうぞ気兼ねなく当院でご相談ください。
ふじもと皮フ科クリニック
院長 藤本栄大

