多汗症
多汗症
多汗症(たかんしょう)は、体温を調節するために必要な量を超えて、たくさんの汗をかいてしまう状態です。
「暑いときや運動をしたときに汗をかく」のは普通の反応ですが、多汗症では気温や運動に関係なく汗が出ることがあります。
特に手のひら、足の裏、わきの下、顔などに多く見られ、日常生活や人との関わりに影響が出ることもあります。
はっきりした病気が原因ではなく、交感神経(汗を出すスイッチのような神経)が過敏に働く体質によって起こります。
若い年代で発症することが多く、左右対称に汗が出るのが特徴です。夜寝ている間はあまり汗が出ません。
家族にも同じ症状がある場合があります。
ほかの病気や薬の副作用によって起こるタイプです。
たとえば、甲状腺の病気、糖尿病、更年期障害、感染症、あるいは一部の薬(抗うつ薬など)が原因になることがあります。
全身に汗が出ることが多く、夜間にも汗をかくことがあります。
日本では成人の約3%程度に見られるとされ、特に思春期から20代にかけて多く発症します。
手汗やわき汗が強いと、人と握手するのがつらかったり、書類やスマホが濡れたり、洋服に汗じみができてしまったりと、日常生活に影響することがあります。
原発性多汗症の診断には、次のような目安があります。
6か月以上、同じ場所に多くの汗が出ている
左右ほぼ同じように汗が出る
夜はあまり汗が出ない
日常生活に支障がある
25歳以下で症状が始まった
家族にも同じ症状の人がいる
このうち2つ以上当てはまる場合、多汗症の可能性があります。
症状が出ている部位に合わせて薬を選びます。
エクロックゲル(ソフプロニウム臭化物)
原発性腋窩多汗症(わき汗)に保険適用。1日1回塗ります。
ラピフォートワイプ(グリコピロニウム)
使い切りシートでわきに塗布します。1日1回。携帯しやすく外出先でも使いやすいです。
アポハイドローション(オキシブチニン)
手のひらに塗って汗を抑えます。1日1回。目や口に入らないよう注意が必要です。
塩化アルミニウム液(保険適用外)
汗腺をふさいで発汗を抑えます。保険適応外です。
手や足を水に浸し、弱い電流を流して汗の出る働きを抑えます。当院では行っておりません。
汗を出す神経の働きをブロックする注射で、自律神経のうちの交感神経からアセチルコリンが分泌されるのを抑制します。数か月効果が続きます。主にわきや手のひらに行います。当院では行っておりません。
プロ・バンサイン(抗コリン剤、プロパンテリン臭化物)とよばれるもので保険適応がある内服薬です。全身的に汗が多い場合や、複数の部位に症状がある場合に使います。副作用として口の渇きや眠気が出ることがあります。
マイクロ波の熱で汗腺を壊す方法です。アポクリン腺、エクリン腺という汗や匂いを出す組織を破壊することで匂いや汗を抑制します。自費診療です。当院では現在おこなっていません。
交感神経を切断・遮断する手術や、透視下に焼灼する方法があります。ただし、ほかの場所に汗が増える「代償性発汗」という副作用の可能性があります。当院では現在おこなっていません。
上記のように様々な治療法があり、それぞれ一長一短あります。
かつては保険診療で利用できる治療法で十分な効果がでるものが少なかったのですが、エクロック、ラピフォート、アポハイドローションといった外用薬は比較的副作用も少なく利用できるようになったのは朗報です。全員が利用できるわけではありませんが、日常生活に支障をきたすような多汗がある場合はご相談ください。
A. 体温を下げるために必要な量を超えて汗をかいてしまう状態を「多汗症」といいます。気温や運動に関係なく、手のひら・足の裏・わき・顔などに多く見られます。体の仕組みの一つであり、「気のせい」や「精神的な弱さ」ではありません。
A. 日本人の約3%ほどにみられます。思春期〜20代で発症することが多く、家族の中に同じ症状をもつ人がいることもあります。
A. 緊張やストレスがきっかけで一時的に汗が増えることはありますが、多汗症の人はもともと汗を出す神経が過敏になっており、精神的な要素だけが原因ではありません。
A. 軽い症状なら市販の制汗剤(アルミニウム塩入りなど)である程度抑えられますが、しっかりと効果を出したい場合は医療用の外用薬や治療をおすすめします。皮膚への刺激が強いものもあるため、肌が弱い方は注意が必要です。
A. いくつかの治療法(例:外用薬のエクロックゲル、ラピフォートワイプ、アポハイドローション、イオントフォレーシスなど)は保険が適用されます。
ただし、ミラドライなどの機器治療は自由診療(保険外)です。
A. 外用薬では肌のかゆみや赤みが出ることがあります。
内服薬(抗コリン薬)では、口の渇き・便秘・眠気などがみられることがあります。症状が強い場合は医師にご相談ください。
A. 胸の中の神経を切る手術(ETS)などは高い効果がありますが、体の他の部分に汗が増える「代償性発汗」が起こることもあります。効果とリスクをよく理解してから選択することが大切です。
A. 多汗症は見た目では分かりにくく、我慢している方が多い病気です。
しかし、今は塗り薬や注射など、日常生活を楽にできる治療法がたくさんあります。
「生活に支障がある」「人前で気になってしまう」と感じたら、遠慮なく皮膚科にご相談ください。
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