やけど(熱傷)
やけど(熱傷)

疾患のイメージ図(AI生成)
高温の物や蒸気、火、カイロ、化学薬品に触れることで皮膚が傷つくことを「やけど(熱傷)」といいます。たとえ低温でも、長時間触れていると深い傷になることがあります。
接触するものの温度と接触していた時間の掛け合わせで重症度が決まります。つまり、加熱したフライパンに接触した場合のように接触が一瞬であっても高温であれば症状は強くなりますし、湯たんぽのような低温のものでも長時間接触していると重症化します。
一般に湯たんぽのような低温の熱傷は接触時間が長くなる場合が多いので深いやけどになる傾向があります。近年ではヘアアイロンでの頭頸部の受傷例も増えています。
深さ(Ⅰ度〜Ⅲ度)
Ⅰ度:表皮だけが赤くなる。数日で治る。
Ⅱ度:真皮までで水疱を形成する。浅いタイプ(2週間治癒、色素沈着のような軽度の跡が残ることがある)、深いタイプ(3〜4週間、跡が残る可能性が高い)。
Ⅲ度:皮下組織まで及び、皮膚が白または黒くなり、痛みを感じにくく、1か月以上治らず、瘢痕や拘縮のリスクが高い。
範囲(全身に占める%)
成人の場合、Ⅱ度+Ⅲ度で15%未満は軽症、15〜30%は中等症、30%以上は重症。
小児・高齢者は基準が厳しく設定されており、Ⅱ度20%以上、Ⅲ度5%以上で重症とされます。
応急処置
受傷直後は流水で可能な範囲で長く冷却が基本。痛みを和らげ、やけどの進行を防ぎます。
衣服は無理に脱がず、そのまま冷やす方が水ぶくれを破かず安全です。
治療(重症度別)
軽症(Ⅰ度、浅達性Ⅱ度、小範囲):
痛みや炎症を抑える軟膏(ワセリンや抗炎症剤など)とガーゼや被覆材等で被覆。
中等症(深達性Ⅱ度、Ⅲ度でも範囲が狭い場合):
感染対策として創部洗浄、軟膏+被覆材/トラフェルミンなどの使用。広範囲や瘢痕化の恐れがある場合は植皮の検討。
重症(広範囲、高深度、特殊部位など):
専門施設への入院(熱傷センター)で全身管理、輸液療法、場合によっては皮膚移植、再生医療などが必要。
浅いやけど(浅達性Ⅱ度まで)は2週間以内に治り、瘢痕が残るリスクは低い。
深いやけど(深達性Ⅱ〜Ⅲ度)は治癒が遅れ、肥厚性瘢痕や拘縮(ひきつれ)などの後遺症のリスクが高くなります。
つまり、浅いやけどは短期間で傷跡もほぼ残りませんが、深いものは瘢痕や拘縮、機能障害のリスクがあります。受傷直後は深さや範囲がわかりにくいため、こまめな受診が大切です。
A. 熱いお湯や油、蒸気、アイロン、カイロなどの高温物質に触れることで起こります。また、低温やけどのように温度はそれほど高くなくても長時間当たることで深いやけどになることもあります。
A. まず冷やすことが最優先です。流水を当てて熱を逃がします。衣服が皮膚に張り付いている場合は無理に脱がず、上から冷やしてください。
A. 自分でつぶさず、清潔に保って受診してください。水ぶくれの中の液体は皮膚の回復を助ける成分を含んでいます。つぶすと感染の原因になります。
A. 次のような場合は皮膚科を受診してください。水ぶくれがある/痛みが強い、または感覚がない/顔・関節・性器などにできた/面積が広い(手のひら2枚分以上)/子どもや高齢者のやけど。
A. 軽いⅠ度熱傷(赤くヒリヒリする程度)は、ワセリンなどで保湿し、清潔を保てば自然に治ります。ただし、炎症が強い・治りが遅い・色素沈着が気になる場合は受診をおすすめします。
A. 浅いやけどはほとんど跡が残りません。しかし、深いⅡ度以上のやけどでは、色素沈着や瘢痕(傷あと)が残ることがあります。治癒後も紫外線対策で跡を最小限に抑えることが可能です。
A. 目安は10〜30分です。長時間の冷却は低体温や凍傷のリスクがあるため、痛みがやわらいだ時点で中止します。患部が広い場合は冷やしながら医療機関へ向かってください。
A. 40〜60℃程度の熱が長時間当たることで起こるやけどです。電気あんか、ホットカーペット、カイロ、湯たんぽなどでよく起こり、見た目が軽くても実は深いやけどのことがあります。特に高齢者や糖尿病の方は注意が必要です。
A. 軽症であれば市販のワセリン系保湿剤で十分な場合もあります。ただし、軟膏選びを間違えると治りが悪くなることがあるため、自己判断で抗生剤やステロイドを使うのは避け、受診して相談してください。
A. 皮膚の奥(真皮全層や皮下脂肪)まで損傷したⅢ度熱傷などでは、自然治癒が難しく、感染や拘縮を防ぐために植皮手術を行うことがあります。当院では必要に応じて専門病院への紹介を行っています。
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