2026年2月01日
当院では、日々の皮膚科・美容皮膚科診療を通じて、地域の皆さまのお悩みに丁寧に向き合うことを大切にしております。また診療だけでなく、より良い医療を未来につなげていくために、大学病院との共同研究など医学の発展に寄与する取り組みにも努めています。
その一環として、これまでに学術誌で公開された当院関連の医学論文について、一般の方にもわかりやすい形で少しずつご紹介してまいります。
専門的な内容をできるだけ易しく、治療や病気への理解に役立つ情報としてお届けいたします。
アトピー性皮膚炎とウパダシチニブの長期効果に関する最新研究
今回は、当院も共同研究として関わらせていただいた最新の医学論文について、一般の方にもわかりやすい形でご紹介いたします。
テーマは、アトピー性皮膚炎の治療薬であるウパダシチニブ(製品名:リンヴォック)を、約2年間(96週間)使用した際の治療効果についてです。
アトピー治療が進化を続ける中で、実際の診療現場(リアルワールド)で、どのくらい効果が続くのかを明らかにした貴重な研究結果となっています。
※本記事は、2025年に米国皮膚科学会誌(JAAD)に掲載された研究をもとに解説しています。
① この研究は何を調べたのか
本研究では、アトピー性皮膚炎の飲み薬であるウパダシチニブを継続して使用した際に、96週間(約2年)という長期にわたって効果がどの程度維持されるのかを詳しく調査しました。
さらに、患者さんを次の2つのグループに分けて比較しています。
・これまで注射や内服などの強い治療(全身療法)を受けたことがない方
・すでに全身療法を経験したことがある方
治療歴によって効果に違いがあるのかを検討した点が、この研究の特徴です。
② なぜこの研究が重要なのか
アトピー性皮膚炎は、良くなったり悪くなったりを繰り返す慢性の病気です。そのため、一時的に改善すること以上に、良い状態をいかに長く保てるかが患者さんにとって大切なポイントになります。薬を使い続けても効き目は落ちないのか、過去の治療歴は今後の治療に影響するのか、こうした日々の診療でよく聞かれる疑問に対して、医学的根拠(エビデンス)をもとに答えるために、本研究が行われました。
③ 研究でわかったこと(主なポイント)
327名の日本人患者さんを対象とした結果から、主に次の3点が明らかになりました。
● 効果のスピードと持続性
治療開始から約4週間で湿疹の範囲や強いかゆみが大きく改善し、その効果の多くは2年後も維持されていました。
● 初めて全身療法を行う方では安定しやすい傾向
これまで全身療法の経験がない患者さんでは、標準的な用量(15mg)でも、長期にわたり良好な状態を保ちやすいことが示されました。
● 治療経験のある方では経過に違いがみられる場合も
すでに他の強い治療を経験している患者さんでは、36週(約9か月)以降に軽度の再燃傾向が見られることがありました。これは、治療歴によって薬の量や治療計画を再検討する必要があることを示唆しています。
④ 皮膚科診療にどう活かされるのか
この研究結果は、患者さん一人ひとりに合わせた治療計画を立てるうえで大きな助けになります。
例えば、
・過去にさまざまな治療を受けてきた方には、早めに調整を検討する
・初めて全身療法を行う方には、長期的な見通しをより安心してお伝えできる
といった、先を見越した診療につながります。
医学的根拠に基づき、必要なときに、必要な治療を行うことは、当院が大切にしている自然で無理のない医療にも通じています。
⑤ 当院からのメッセージ
今回ご紹介した研究は、ふじもと皮フ科クリニックと、当院で非常勤として診療にあたっている萩野医師、そして日本医科大学千葉北総病院との共同研究によって実現した成果です。
私たちは、地域の皆さまを診察する身近な医療を大切にしながら、大学病院との連携を通じて新しい知見を医学の発展に還元することにも努めています。クリニックでの診療が、未来の標準治療につながっていく。その意識を持って、これからも根拠に基づいた安心できる医療を提供してまいります。
※治療は症状や体質によって異なるため、医師と相談しながら進めることが大切です。
リンヴォックをご希望の方は日本医科大学千葉北総病院を紹介しております。
【原著論文】
著者名: Teppei Hagino, Hidehisa Saeki, Eita Fujimoto, Naoko Kanda
論文タイトル:A 96-week real-world outcome of upadacitinib treatment for atopic dermatitis: Systemic therapy-naive versus -experienced patients
掲載誌: Journal of the American Academy of Dermatology
掲載年: 2025年
DOI: 10.1016/j.jaad.2025.01.052
URL: https://doi.org/10.1016/j.jaad.2025.01.052

