尋常性乾癬

尋常性乾癬

尋常性乾癬とは

尋常性乾癬

 フケ状の銀白色の垢が付着した境界がはっきりとした赤い発疹が全身の様々なところに生じる慢性の皮膚病です。

機械的な刺激を受けやすい肘、膝、腰、頭などの部位に多く見られます。皮膚の慢性の炎症と、代謝の異常と考えられています。

爪の症状や関節炎を伴う事もあり、稀に全身に発疹が及ぶこともあります。

原因

 正確な原因はまだ分かっていません。体質的な要素と環境や生活習慣などの外的な要因が複合的に作用して発症すると考えられています。糖尿病や脂質異常など生活習慣病との関連が強く示唆されていますし、動脈硬化などの血管病変と関連しているとも考えられています。

治療法

 以下に挙げるような治療方法が現在利用できるものです。外用薬での治療が主体となりますが、比較的副作用の少ない内服薬や生物学的製剤などが登場し乾癬治療は新たな局面を迎えています。画一的な治療法はなく各個人の症状や QOL などに応じてこれらの選択肢の中から選んで治療していきます。

 

<外用療法>

 最も基本的な治療法です。ビタミン D 外用薬、ステロイド外用薬及びこれらの配合剤と分けられます。剤形としては、軟膏、クリーム、ローションの他に現在では薬剤が配合されたシャンプーもあります。

・ビタミン D 外用薬

 表皮細胞の代謝異常を正常に戻す役割があり、厚みがある皮膚病変を平らにしていくのに効果があります。即効性はありませんが副作用が少なく長期的な治療に適しています。まれに、使用した部位の刺激性が問題になることや、1日に大量に外用することで高カルシウム血症になることがあります。

・ステロイド外用薬

 即効性があり赤みを減らすのに有効です。ただし長期間むやみに連用すると毛細血管拡張や感染症などの作用を生じることがあります。

・ビタミン D およびステロイド外用薬の配合剤 

 上記のビタミン D 外用薬とステロイド外用薬の配合薬です。即効性があり持続性も高い高く相乗効果が期待できます。一方で両者の副作用にも注意する必要があります。

 

<内服療法>

 外用療法で十分にコントロールできない場合や病変の範囲が広い場合などに用いられることが多いです。ただし内服薬特有の副作用に注意する必要があります。

・レチノイド(チガソン)

 表皮細胞の代謝の異常をおさえて正常な表皮に戻していきます。唇が荒れたり手足の皮膚がむけたりというような副作用が生じることもあります。催奇形性が問題となるため妊娠する場合は服用中止後も避妊が必要となります。

・シクロスポリン(ネオーラル)

 異常な免疫を抑えることで作用する薬剤です。有効性は高いですが副作用として血圧の上昇や腎機能障害が問題となります。

・アプレミラスト(オテズラ)

 免疫に関連する酵素を抑えることで炎症を抑えていく働きがあります。副作用として下痢、頭痛や吐き気を生じすることがあります。比較的安全で有効性も高いのですが、薬価が高いことが問題の一つです。 

・デュークラバシチニブ(ソーティクツ)

 細胞の外からの刺激を細胞内に伝えるためのリン酸化酵素であるチロシンキナーゼ2を阻害する薬剤です。副作用のチェックを行う必要があるため指定された医療機関での治療となります。

 

<光線療法(紫外線療法)>

 紫外線の中の皮膚病変に有効なある波長だけを用いた光線療法です。比較的古くからある治療法の一つで現在ではいくつかの種類がありそれぞれ有効性は高いのですが、通院回数が多くなるのが問題となります。

 

<生物学的製剤>

 免疫に関わる特定のタンパク質をターゲットにして特異的に抑制することで免疫の異常を抑えることで作用するものです。注射薬ですので点滴や皮下注射があります。特異的に作用するため比較的副作用が少なく将来的には主流となる治療法とも考えられています。 現在でも新しい製品が次々と開発されていますが、薬価が高いことや現状では大学病院などの特定の病院でのみ受けられる治療です。

 

中等症・重症の患者様へ

 上記のように現在では様々な治療が登場しています。現在当院では日本医科大学千葉北総病院皮膚科と連携し、中等症・重症の患者様でご希望の方は上記の治療をご案内しています。従来コントロールが不良であった方もQOLに支障が出ない程度までコントロールできている方も多くいらっしゃいます。また、当院の活動は大学での医学研究にも貢献し、当院で勤務している萩野医師が医学論文*1,2,3,4を発表しています。中等症・重症の尋常性乾癬の患者様で治療にお困りの場合ご相談ください。

 

 *1 Teppei Hagino, Biomarkers and Predictive Factors for Treatment Response to Tumor Necrosis Factor-α Inhibitors in Patients with Psoriasis

*2 Teppei Hagino, Hidehisa Saeki, Eita Fujimoto and Naoko Kanda. Effects of Biologic Therapy on Laboratory Indicators of Cardiometabolic Diseases in Patients with Psoriasis.  Journal of Clinical Medicine. 2023;5:vol12

*3 Teppei Hagino, Hidehisa Saeki, Eita Fujimoto and Naoko Kanda. Effectiveness and safety of deucravacitinib treatment for moderate-to-severe psoriasis in real-world clinical practice in Japan. Journal of Dermatological Treatment Volume 35, 2024 – Issue 1(臨床でのデュークラバシチニブに関する世界初の医学論文)

*4 Teppei Hagino, Hidehisa Saeki, Eita Fujimoto and Naoko Kanda. Real-world effectiveness and safety of bimekizumab in Japanese patients with psoriasis: A single-center retrospective study. The journal of dermatology, 14 March 2024

注意点

・刺激を受ける部位に病変が出現するケブネル現象と呼ばれる症状が乾癬の皮膚ではみられます。従ってなるだけ刺激を受けないような生活が必要となりますので、衣服はなるべく柔らかい素材のもの選び擦れないように気をつけたり、皮膚をかいたりするなどの刺激を避けるようにしましょう 。

・糖尿病や動脈硬化などの生活習慣病との関連が示唆されていますので生活習慣病を有する方は食生活や運動などの生活習慣の見直しも心がけましょう。

・風邪や扁桃炎などの感染症にかかると一気に病変が悪化することがよく知られています。従って手洗いうがいなどの励行や規則正しい生活を心がけましょう 。

よくある質問

Q:うつる病気ですか?

A:誤解されがちですが感染症ではないので人には移ることありません。当然温泉やお風呂やプールなどでもうつることありませんし、接触することでも絶対にうつることありません。周囲の方の理解がとても大事になります。

 

Q:治らない病気ですか?

A:見た目や体格が変わりにくいのと同じように体質自体が変わることはありませんが、上手にコントロールすれば症状の少ない状態を維持できるようになります。

 

Q:生物学的製剤で完治できるのですか?

A:原因が正確にわかったわけではないため未だ完治する治療はありません。 そのため外用薬や内服薬と同様生物学製剤も症状を抑えていく治療です。